日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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ポスター発表(専門領域別)

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体育心理学(奇数演題) ポスター発表

2022年9月2日(金) 10:00 〜 11:00 第一体育館バレーボール1 (第一体育館バレーボール)

[03心-ポ-31] 動作誇張法を用いた他者動作の結果予測に関する検討

*福原 和伸1、樋口 貴広1、中本 浩揮2 (1. 東京都立大学人間健康科学研究科、2. 鹿屋体育大学スポーツ人文・応用社会科学系)

テニスや野球などの時間的制約の厳しい対戦型競技では、ボールの到達位置などの将来事象を他者(相手)動作から早期かつ的確に予測する能力が求められる。スポーツの予測研究ではこれまで、相手動作の映像刺激を用いることで、予測能力における熟達の違いやトレーニングの効果について調べてきた。しかし先行研究の多くは、個人の予測能力水準に応じた映像モデルを採用しておらず、対象者によっては予測課題の難易度が難しくなるなど、適切な評価/トレーニングに繋がらない問題があった。この問題解決には、予測課題の難易度を数値化表現できる視覚刺激を用いることが有効となる。そこで本研究では、バーチャルアバターの運動学的特徴を誇張することで動作の弁別精度を高める手法(動作誇張法:Pollick et al 2001)に着目し、このバーチャル刺激が予測課題の難易度を操作できる特性を有するかを検討した。テニス熟練者12名と初心者19名は、バーチャル環境にて対峙するテニスアバターのフォアハンドショットによる打球コースを予測する課題を実施した。動作誇張9条件(5%〜400%)が設定され、各誇張条件における打球コースの予測精度を評価した。その結果、テニス熟練者と初心者ともに、誇張度が高くなるにつれて予測精度が向上することが確認された。さらにこうした予測精度の段階的変化には、熟達の違いがあることが認められた。また興味深いことに、初心者のうち、球技スポーツの競技経験の有無でも予測精度に差が見られた。これらの結果から、本研究で採用した動作誇張を施したバーチャル刺激は、テニスの打球コース予測における課題の難易度を操作できる特性を有することが分かった。本研究で得られた成果は、スポーツの予測研究において近年の中心的話題であるベイズ統合仮説(詳細は中本・福原,2021を参照)の検証に繋がるとともに、個人の予測能力に応じた新たな知覚トレーニングの開発にも貢献することが期待される。