[03心-ポ-12] 大学体育授業における大学新入生のライフスキル獲得の特徴について
太極拳、ノルディックウォーキングとバスケットボール授業を例に
体育授業は、大学新入生のライフスキル(以下、LSと略す)の育成や、大学生活への適応に役に立つことが示されている(島本・山本、2018;陳・坂東、2020)。しかし、既存の大学体育授業の中で、太極拳種目における履修者のLS獲得の特徴と、ほかの運動種目との関係については、ほとんど検討されていないのが現状である。 そこで、本研究では、太極拳、ノルディックウォーキングとバスケットボールの運動種目が選択された体育授業の履修者を対象に、LS獲得の特徴を明らかにすることを目的とした。対象者は大阪府内の大学に在籍する1年生(男性121名、女性167:平均年齢18.07±0.6歳)であった。LSの調査は2019年4月(学期前)と8月(学期後)に実施した。学期前・後の運動種目によるLS下位尺度得点の差を検討するために、各下位尺度の得点を従属変数、学期前・後×運動種目を独立変数とする二要因分散分析にて解析し、合わせて要因別主効果の検討を行った。 その結果、LSの下位尺度「リーダーシップ」(F(2、285)=8.20、p<.001)、「計画性」(F(2、285)=3.97、p<.05)、「自尊心」(F(2、285)=7.73、p<.001)、「前向きな思考」(F(2、285)=3.07、p<.05)において交互作用が有意に認められた。その後の多重比較を行ったところ、平均値において学期前では太極拳、ノルディックウォーキング、バスケットボールの順で高得点を示し、そして4つの下位尺度すべてに運動種目で差が認められたが、学期後においては「計画性」のみに差が認められた。また、いずれの種目においても学期前・後で有意な差が認められた。つまり、LS獲得は運動経験によって促進されることが示唆された。 本研究では、大学新入生のLS獲得について、運動種目を考慮することの重要性が示唆された。学期前・後によってLS獲得に違いが見られ、大学新入生の特性(例:運動習慣の有無など)を配慮にいれての授業開始前の指導やオリエンテーションへの配慮が必要と考えられた。