日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題A】トップアスリート養成をいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題A】口頭発表④

2023年8月30日(水) 11:25 〜 12:09 RYB2 (良心館地下1階RYB2番教室)

座長:谷釜 尋徳(東洋大学)

11:25 〜 11:39

[競技スポーツ-A-12] 女子プロサッカー選手における社会貢献に対する意識(方)

競技レベルの比較を通じて

*東海林 祐子1、森 将輝1 (1. 慶應義塾大学)

Ⅰ 背景と目的
日本初の女子プロサッカーリーグ(以下,WEリーグ)は,競技力向上のみならず「世界一アクティブな女性コミュニティへ(社会事業)」などの理念を掲げ活動を推進している.これまで,日本のスポーツは勝利のみが優先され,スポーツの価値を社会に広めていく社会貢献活動の視点は不足していた.一方,アメリカの女子サッカーでは,興奮,希望,自信といった感情で示されるエンパワーメントを選手が自律的に高め(Allison,2016),競技力と共にその価値を高めている.本研究では,WEリーグの理念に即した活動の推進が女子プロサッカー選手における社会貢献の意識に与える影響を競技力別に明らかにする.
Ⅱ 研究の方法
参加者は2022年8月時点でWEリーグに加入するクラブの選手登録者307名のうち,①調査データ提供に対する同意が得られていること,②調査票に対して回答に不備がないこと,③WE ACTION活動に年間を通じてチームで参加していることを満たす136名を対象とした(年齢:平均24.5歳,レンジ18-35歳).調査項目は,プロリーグ発足による環境変化に対する認識(環境変化)10項目,理念推進活動に対する理解(理念理解)12項目,一般的な社会貢献に対する意識(社会貢献意識)7項目であった.環境変化および理念理解を説明変数,社会貢献意識を被説明変数とし,重回帰分析を行った.重回帰分析は,日本代表経験の有無で対象者を群分けした上で行った.
Ⅲ 結果と考察
日本代表経験の有無に関わらず「理念理解」は「社会貢献意識」に対して正の影響(有群:β=.609, p < 0.001;無群:β= .571, p < 0.001 )があり,WEリーグの理念である社会貢献と競技力の両立に向けた意識が関連することが示唆された.「理念理解」に伴うクラブの枠を超えた交流が「社会貢献意識」に有効であることが示唆された.