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[06経-口-05] スポーツマネジメント研究における科学哲学の役割
研究という営みが、「知識を獲得・発展させる体系的なプロセス」(Gratton & Jones,2010,p. 4)であるならば、我々は研究に取り組む際に、そもそも知識とは何か、知識を獲得・発展させるとはどういうことなのかという認識論的な問題(i.e.,How we know what we claim to know)に答える必要がある。科学哲学の一分野である認識論は、そうした知識やその獲得・発展についての仮定を提供する(Crotty, 1998)。一般的に認識論は、主体としての研究者と、客体としての現象の関係性の違いにより、客観主義、構築主義、主観主義の3つ立場に分けられ、それぞれが方法論、データ収集・分析方法、さらにはインプリケーションまで、当該研究全体に一貫性と正当性を与える(Crotty,1998)。この重要な役割にも関わらず、我が国のスポーツマネジメント領域において科学哲学に言及した文献は極めて少なく(例外は堀, 2014等)、特に北米のスポーツマネジメント領域における科学哲学教育を充実させようとする動き(James, 2018)と比較すると、我々は後塵を拝していると考えられる。これについて発表者は、科学哲学の役割への理解の乏しさが、当該研究手法の選択に対する正当性の欠如や、インプリケーションの誤謬、そして我が国のスポーツマネジメント領域における量的・質的研究者間のコミュニケーションの弊害となる可能性を指摘する。この問題への取り組みとして、本発表は認識論を中心とした科学哲学の役割を概観し、スポーツマネジメント領域の主要学術誌(e.g., Journal of Sport Management, European Sport Management Quarterly, Sport Management Review)に掲載された先行研究の検討を通じて、実証研究における様々な哲学的立場の適用についての道筋を示す。