[09方-ポ-47] マット運動における自己評価と他者評価の関係性の検討
本研究では、マット運動における演技を、実施者本人による自己評価と他の被験者による他者評価との関係性について検討することを目的とした。
被験者は30名として、健常な大学生の男子20名・女子10名であった(平均年齢20.9±0.79歳)。被験者には、実験課題としてマット運動の技(前転・開脚前転・倒立前転・側方倒立回転・後転・開脚後転)を組み合わせて演技を行わせた。その際に、課題実施者は自己評価を行い、他の被験者は実施者の演技を観察して他者評価を行った。自己評価ならびに他者評価は10点を満点として点数化した。また同時に器械運動の専門性の高い指導者1名にも課題実施者の演技を観察してもらい、同じく10点満点で評価させた。
指導者による評価と被験者による他者評価の平均値との間には非常に強い正の相関関係がみられた(r=0.90、p<0.001)。同様に指導者による評価と被験者による自己評価との間には非常に強い正の相関関係がみられた(r=0.82、p<0.001)。また、被験者による他者評価と他者評価の標準偏差との間には、二次曲線のフィッティングで単峰性の山なりの関係性がみられた(R=0.63)。
これらのことから、被験者による自己評価および他者評価と指導者の評価は同様の傾向であり、被験者の評価は妥当なものであると考えられる。しかしながら、被験者による他者評価は、上位群と下位群に対してはばらつきが小さいが、中位群に対してはばらつきが大きかった。つまり、技能が高くも低くもない被験者に対する他者評価については、評価をする人によって差が大きいということを意味している。この差には客観的に運動を見て理解する能力や性格などのパーソナリティの要素も関係すると考えられた。