[04生-ポ-12] フルマラソンの失速に影響を及ぼす生理学的要因の検討
フルマラソンをより速く完走するにはレース後半で失速しないことが重要である。失速にはペース戦略、栄養戦略および個人の生理学的能力などの要因が相互的・相加的に関わるため、各要因がどの程度失速に関係しているのかを明らかにすることは難しい。そこで、本研究ではマラソン中の走行ペースを統制したうえで、生理学的指標と失速の関係を調査した。対象者は2022年11月13日開催のつくばマラソンに参加した男性ランナー14名とした。対象者はつくばマラソン開催日の2~20日前にトレッドミル上で漸増負荷試験を実施し、最大酸素摂取量(VO2max)、走の経済性(RE)、酸素摂取水準(%VO2max at VT)および最大脂質酸化量(MFO)などを測定した。対象者のマラソン中の走速度と心拍数を取得し、得られたデータから5km毎のCardiac cost(心拍数/走速度、以下:CC)と前後半失速率を算出した。対象者のマラソン推定適正ペースをVO2max、REおよび%VO2max at VTから算出し、対象者にはスタートから中間点まではこのペースで走るように指示した。対象者のVO2maxは62.0±7.2ml/kg/minであり、完走タイムは3時間43分53秒±48分33秒であった。対象者のマラソン推定適正ペースは12.6±1.9km/hであり、スタートから中間点までの平均走速度は12.6±2.2km/hであった(r=0.96)。前後半失速率と5kmから20kmのCCの変化率(ΔCC5-20)に強い相関が確認できた(r=0.86、p<0.01)。また、有意性はなかったもののΔCC5-20とMFOに中程度の相関が確認できた(r=-0.49、p=0.11)。以上から、マラソン前半にCCを増加させないことが失速の予防に重要と考えられる。さらに、MFOが優れるランナーはマラソン中にCCが増加しにくい可能性がある。