[CS1-4] 消化器内科の視点から見た非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と歯周病の最新知見
研修コード:2504
略歴
2001年 横浜市立大学医学部を卒業
2004年 横浜市立大学大学院医博士課程を卒業
2005年 横浜市立大学附属病院消化器内科助手
2007年 横浜市立大学附属病院助教
2013年10月~2016年2月 米国フロリダ州マイアミ大学留学
2016年3月 横浜市立大学附属病院 肝胆膵消化器病学 講師
2017年8月 神奈川歯科大学特任講師兼任
所属学会
日本消化器病学会専門医,日本肝臓学会専門医,日本消化器内視鏡学会専門医,日本消化管学会専門医・指導医,日本内科学会総合専門医
2001年 横浜市立大学医学部を卒業
2004年 横浜市立大学大学院医博士課程を卒業
2005年 横浜市立大学附属病院消化器内科助手
2007年 横浜市立大学附属病院助教
2013年10月~2016年2月 米国フロリダ州マイアミ大学留学
2016年3月 横浜市立大学附属病院 肝胆膵消化器病学 講師
2017年8月 神奈川歯科大学特任講師兼任
所属学会
日本消化器病学会専門医,日本肝臓学会専門医,日本消化器内視鏡学会専門医,日本消化管学会専門医・指導医,日本内科学会総合専門医
脂肪肝の原因は大きくアルコール性と非アルコール性に分類される。非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)は大部分が可逆性の良性疾患(非アルコール性脂肪肝:nonalcoholic fatty liver: NAFL)であるが,10~20%の頻度で進行性の病態である非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)が存在し,肝硬変へと進展する可能性を有する。日本でも食生活の欧米化と運動不足によりNAFLD/ NASHの罹患率は増加の一途をたどりNAFLDは1000万人以上,NASHは200万人以上存在することが推定されている。NAFLDおよびNASHは自覚症状に乏しく,健康診断や人間ドックで肝機能異常として偶発的に指摘されることが多いが,病態が進行し肝硬変や肝臓癌になってから医療機関を受診されることもあるため社会的な問題となっている。現在ではNAFLD/NASHは世界中で最多の肝疾患として認知され,末期肝不全肝移植待機リストでも上位3位以内に入る疾患であり,また新規肝細胞癌発症患者の原因肝疾患でも非B非C型肝炎由来の肝細胞癌が増加傾向にあり,NAFLD/NASHの臨床的な重要性は著しく大きくなっていることが指摘されている。
歯周病などの口腔疾患が口腔内のみならず,他の臓器に影響を及ぼしうるという考え方は古代エジプトから提唱されていたが,その概念は近年の研究において確固たるものとなっている。中でもNAFLDに親密な関係のある2型糖尿病やNAFLD患者の死因として重要な心筋梗塞などの心血管病変との関連はもっとも研究成果が蓄積されている分野である。NAFLD/NASHと歯周病の直接的な関連においては,コホート研究においてNAFLD患者では健常対照群と比較し有意に P. gingivalisの有病率が高いこと,さらにNAFLD患者に感染している P. gingivalis はfimA遺伝子解析で94.3%が毒性の強いII,IV,Ibであり,特に50%の患者はⅡ型(他の線毛型株に比べ効率に感染細胞にアポトーシスを誘導し強力な細胞障害性を有する)であり歯周病がNAFLD/NASHの発症,増悪に関与する可能性が報告されている。歯周病菌がNAFLD/NASHを起こす原因として歯周病菌由来の毒素(LPS)などPAMPs(Pathogen associated molecular patterns)刺激による影響が重要であると考えられているが,一方で P. gingivalisの感染者がすべてNAFLD/NASHを発症するとは限らないなど機序については未知な領域が多い。肥満に伴う脂肪肝ではレプチン-STAT3シグナルを介して肝クッパー細胞にLPS共受容体であるCD14が高発現し,正常肝では炎症を起こさない程度の低量エンドトキシンでも脂肪肝に過剰な炎症反応を惹起しNASH進展をきたすことが報告されており, P. gingivalis感染やLPS刺激という外的病因子のみならずHostの因子としてエンドトキシン感受性の応答が亢進している可能性も示唆されている。
近年欧米のみならず我が国でもNAFLD/NASH診療ガイドラインが発刊され診断や治療に関しての指針が示されている。治療方針に関しては保険収載されている薬剤が存在しないため,NAFLDを起こす原因に応じて治療することが推奨されている。NAFLD患者に対し歯周病治療(口腔衛生指導,プラークコントロール,歯石除去,歯根清掃,歯周ポケット薬物療法)によりトランスアミナーゼの有意な低下が得られたとする報告もあり歯周病とNAFLD/NASHの関係はますます興味深い分野と考えられる。本講演ではNAFLD/NASHの歴史的背景から疾患概念,歯周病との関連などの知見を概説する。
歯周病などの口腔疾患が口腔内のみならず,他の臓器に影響を及ぼしうるという考え方は古代エジプトから提唱されていたが,その概念は近年の研究において確固たるものとなっている。中でもNAFLDに親密な関係のある2型糖尿病やNAFLD患者の死因として重要な心筋梗塞などの心血管病変との関連はもっとも研究成果が蓄積されている分野である。NAFLD/NASHと歯周病の直接的な関連においては,コホート研究においてNAFLD患者では健常対照群と比較し有意に P. gingivalisの有病率が高いこと,さらにNAFLD患者に感染している P. gingivalis はfimA遺伝子解析で94.3%が毒性の強いII,IV,Ibであり,特に50%の患者はⅡ型(他の線毛型株に比べ効率に感染細胞にアポトーシスを誘導し強力な細胞障害性を有する)であり歯周病がNAFLD/NASHの発症,増悪に関与する可能性が報告されている。歯周病菌がNAFLD/NASHを起こす原因として歯周病菌由来の毒素(LPS)などPAMPs(Pathogen associated molecular patterns)刺激による影響が重要であると考えられているが,一方で P. gingivalisの感染者がすべてNAFLD/NASHを発症するとは限らないなど機序については未知な領域が多い。肥満に伴う脂肪肝ではレプチン-STAT3シグナルを介して肝クッパー細胞にLPS共受容体であるCD14が高発現し,正常肝では炎症を起こさない程度の低量エンドトキシンでも脂肪肝に過剰な炎症反応を惹起しNASH進展をきたすことが報告されており, P. gingivalis感染やLPS刺激という外的病因子のみならずHostの因子としてエンドトキシン感受性の応答が亢進している可能性も示唆されている。
近年欧米のみならず我が国でもNAFLD/NASH診療ガイドラインが発刊され診断や治療に関しての指針が示されている。治療方針に関しては保険収載されている薬剤が存在しないため,NAFLDを起こす原因に応じて治療することが推奨されている。NAFLD患者に対し歯周病治療(口腔衛生指導,プラークコントロール,歯石除去,歯根清掃,歯周ポケット薬物療法)によりトランスアミナーゼの有意な低下が得られたとする報告もあり歯周病とNAFLD/NASHの関係はますます興味深い分野と考えられる。本講演ではNAFLD/NASHの歴史的背景から疾患概念,歯周病との関連などの知見を概説する。