[CS2-3] 早産・低体重児出産と歯周病との関わり ~母子の健康を願って~
研修コード:2504
略歴
2003年3月 東京医科歯科大学歯学部 卒業
2003年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院 臨床研修医
2008年3月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 修了
2008年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院 医員
2011年11月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 助教
2012年5月 米国ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センター 博士研究員
2014年9月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 助教
2003年3月 東京医科歯科大学歯学部 卒業
2003年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院 臨床研修医
2008年3月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 修了
2008年4月 東京医科歯科大学歯学部附属病院 医員
2011年11月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 助教
2012年5月 米国ハーバード大学医学部ジョスリン糖尿病センター 博士研究員
2014年9月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野 助教
近年,歯周病と全身疾患との関係が取り上げられ,糖尿病,循環器疾患はもとより,妊産婦の切迫早産,早産・低体重児出産との関わりについても注目を浴びている。妊娠から出産に至るまでには,様々なホルモンやサイトカインなどが複雑に作用するが,出産に悪影響を与える因子として,細菌性膣炎などの細菌感染があげられる。子宮内部への細菌感染は,尿路感染症・細菌性膣炎などが原因として考えられている。しかし,尿路感染症・細菌性膣炎などが認められない妊婦においても,ある一定の割合で,子宮内部への細菌感染が認められており,さらなる原因究明が求められている。
一方,歯周病患者には歯周局所で炎症性因子が持続的に産生されること,また,グラム陰性嫌気性細菌が主体の歯周病原細菌が直接的に血中に移行することなどから,歯周病には慢性炎症および感染症としての側面がある。このことにより,歯周病が切迫早産,早産・低体重児出産に対するリスクファクターとして注目され,研究が行われている。
歯周病と出産の関連については,米国のOffenbacherらにより初めて報告された。本邦においても,切迫早産または早産であった妊婦は,歯周組織検査の結果が悪くかつ T. forsythiaの占める割合が高いこと,また,血清中のIL-1β,IL-8の濃度が高値であったことが報告されており,私たちも,早産であった妊婦からは口腔内のP. gingivalisが有意に高頻度で検出されたことを報告している。
歯周病と出産との関連を示す基礎研究のエビデンスも徐々に蓄積されてきており,絨毛膜由来細胞は,F. nucleatumのLPSにより,TLR2やTLR4を介して副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンやIL-6を上昇させることなどが示されている。また,P.gingivalisを腹腔内投与したマウスは低体重仔出産となることなども報告されている。
一方,歯周治療によって出産結果が改善するかどうかを検討した歯周治療の介入研究に関しては,400名の妊婦を対象にしたLopezらの研究により,妊娠中の歯周治療は有意に早産・低体重児出産の発現率を低下させることが初めて報告された。しかし,その後の介入研究では,歯周治療は出産結果に影響を与えないことも報告され,2010年と2013年に歯周治療の出産への影響に関するメタアナリシスが行われた結果,歯周治療は早産の発現率を低下させる効果はないと結論付けられた。
本シンポジウムでは,文献や私どもの研究結果を交えながら,歯周病と切迫早産,早産・低体重児出産,および妊娠合併症との関連の有無,またそれらの関連のメカニズムに関する研究,歯周治療による切迫早産・早産・低体重児出産への介入研究についてのエビデンスを説明する。妊娠中の歯科治療が出産結果に影響しないとしても,妊娠関連歯肉炎やう蝕の発症を抑制するためにも,妊娠期間中に十分なプラークコントロールを維持することは必要である。妊婦および妊娠を考えている女性に対し,口腔の健康を維持することによって,母子の健康増進に貢献できることを強調したいと考えている。
一方,歯周病患者には歯周局所で炎症性因子が持続的に産生されること,また,グラム陰性嫌気性細菌が主体の歯周病原細菌が直接的に血中に移行することなどから,歯周病には慢性炎症および感染症としての側面がある。このことにより,歯周病が切迫早産,早産・低体重児出産に対するリスクファクターとして注目され,研究が行われている。
歯周病と出産の関連については,米国のOffenbacherらにより初めて報告された。本邦においても,切迫早産または早産であった妊婦は,歯周組織検査の結果が悪くかつ T. forsythiaの占める割合が高いこと,また,血清中のIL-1β,IL-8の濃度が高値であったことが報告されており,私たちも,早産であった妊婦からは口腔内のP. gingivalisが有意に高頻度で検出されたことを報告している。
歯周病と出産との関連を示す基礎研究のエビデンスも徐々に蓄積されてきており,絨毛膜由来細胞は,F. nucleatumのLPSにより,TLR2やTLR4を介して副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンやIL-6を上昇させることなどが示されている。また,P.gingivalisを腹腔内投与したマウスは低体重仔出産となることなども報告されている。
一方,歯周治療によって出産結果が改善するかどうかを検討した歯周治療の介入研究に関しては,400名の妊婦を対象にしたLopezらの研究により,妊娠中の歯周治療は有意に早産・低体重児出産の発現率を低下させることが初めて報告された。しかし,その後の介入研究では,歯周治療は出産結果に影響を与えないことも報告され,2010年と2013年に歯周治療の出産への影響に関するメタアナリシスが行われた結果,歯周治療は早産の発現率を低下させる効果はないと結論付けられた。
本シンポジウムでは,文献や私どもの研究結果を交えながら,歯周病と切迫早産,早産・低体重児出産,および妊娠合併症との関連の有無,またそれらの関連のメカニズムに関する研究,歯周治療による切迫早産・早産・低体重児出産への介入研究についてのエビデンスを説明する。妊娠中の歯科治療が出産結果に影響しないとしても,妊娠関連歯肉炎やう蝕の発症を抑制するためにも,妊娠期間中に十分なプラークコントロールを維持することは必要である。妊婦および妊娠を考えている女性に対し,口腔の健康を維持することによって,母子の健康増進に貢献できることを強調したいと考えている。