日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

一般演題ポスター

Periodontal Medicine

一般演題ポスター
Periodontal Medicine(基礎)

2017年12月16日(土) 09:00 〜 17:00 ポスター会場 (さくら)

P-009~P-018
(ポスター討論:11:40~12:30)

[P-017] 口腔細菌による誤嚥性肺炎発症メカニズムの解明-歯周病原菌は種々の呼吸器系上皮細胞からの炎症性サイトカイン産生を誘導する-

Elucidation of molecular mechanisms of aspiration pneumonia caused by oral bacteria -Periodontopathic bacteria induce production of IL-8 in various respiratory epithelial cells-

渡辺 典久1,2,早田 真由美4,2,田村 宗明2,3,神尾 宜昌2,3,田中 一2,3,佐藤 秀一1,今井 健一2,3/Norihisa Watanabe1,2,Mayumi Hayata4,2,Muneaki Tamura2,3,Noriaki Kamio2,3,Hajime Tanaka2,3,Shuichi Sato1,Kenichi Imai2,3 (日本大学歯学部歯科保存学第Ⅲ講座1,日本大学歯学部細菌学講座2,日本大学総合歯学研究所生体防御部門3,日本大学歯学部摂食機能療法学講座4/Department of Periodontology, Nihon University School of Dentistry1,Department of Microbiology, Nihon University Graduate School of Dentistry2,Division of Immunology and Pathobiology, Nihon University School of Dentistry3,Department of Dysphagia Rehabilitation,Nihon University School of Dentistry4)

研修コード:2203

キーワード:歯周病原菌、呼吸器系上皮細胞、誤嚥性肺炎、炎症性サイトカイン

【目的】口腔細菌が誤嚥性肺炎の原因となること,口腔ケアがその予防に有効であることは広く知られるようになった。しかし,口腔細菌がどのように誤嚥性肺炎を引き起こすのか,なぜ予防に口腔ケアが有効なのか,EBMを実践する上で最も重要な点は未解明のままである。肺炎の発症と進展において,IL-8等の炎症性サイトカインは中心的な役割を担うことが知られている。そこで,誤嚥した口腔細菌が呼吸器上皮細胞に作用し炎症性サイトカインを誘導,肺炎を惹起するのではないかと考え本研究を企画した。
【方法と結果】咽頭,気道及び肺の上皮細胞にP. gingivalisの死菌を添加した結果,量と処理時間依存的に炎症性サイトカインの遺伝子発現が強く誘導された。ELISA解析から,好中球浸潤や組織破壊等に関わるIL-8とIL-6の産生が顕著であり,その誘導にはNF-kBとMAPKの関与が示唆された。また,F. nucleatumやT.denticola等によっても強いサイトカイン産生が誘導されたが,S.mitisS.salivarius処理では変化が認められなかった。
【考察】口腔衛生状態が悪い人の唾液1ml中には109個以上の細菌が存在し,1012個以上の細菌を日々嚥下している。今回の実験では,106~108 個の細菌を用いていることから,歯周病原菌が炎症性サイトカイン産生の誘導を介して肺炎の発症に深く関与していることが示唆された。われわれは,歯周病原菌が肺炎球菌や緑膿菌等のレセプターの発現を誘導することも見出しており,誤嚥性肺炎予防に口腔ケアが有効であることを分子レベルで提示できたと考える。