日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

一般演題ポスター

微生物

一般演題ポスター
微生物(臨床)

2017年12月16日(土) 09:00 〜 17:00 ポスター会場 (さくら)

P-035~P-045
(ポスター討論:11:40~12:30)

[P-045] 口腔細菌の特定と口腔治療が急性椎前部膿瘍の治癒に奏功した症例

Identification of oral bacteria and dental treatment led healing of acute prevertebral abscess: a case report

松永 一幸1,2,4,山城 圭介3,平田 千暁1,2,4,猪原 健2,4,大久保 圭祐1,磯島 大地3,坂井田 京佑3,大森 一弘1,山本 直史1,高柴 正悟3/Kazuyuki Matsunaga1,2,4,Keisuke Yamashiro3,Chiaki Hirata1,2,4,Ken Inohara2,4,Keisuke Okubo1,Daichi Isoshima3,Kyosuke Sakaida3,Kazuhiro Omori1,Tadashi Yamamoto1,Shogo Takashiba3 (岡山大学病院歯周科1,脳神経センター大田記念病院歯科2,岡山大学大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野3,猪原歯科・リハビリテーション科4/Okayama University Hospital Department of Periodontics & Endodontics1,Department of Dentistry, Brain Attack Center Ota Memorial Hospital.2,Department of Pathophysiology-Periodontal Science, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences.3,Inohara Dental and Rehabilitation Clinic4)

研修コード:2402

キーワード:外傷性歯根破折、菌血症、椎前部膿瘍、歯周病、インプラント周囲炎

【概要】外傷後の椎前部膿瘍を来した症例に対して,起炎菌である口腔細菌を特定し,口腔治療によって治癒に導いた症例である。
【症例】77歳,男性。頭部外傷にて大田記念病院に搬送され,急性硬膜下血腫の診断で入院した。入院翌日から発熱と頚部痛が出現し,徐々に増悪した。MRI検査にて頸椎前方に液体様病変を,血液培養検査で口腔内細菌であるStreptococcus parasanguinisを検出したため,感染源の精査目的に歯科へ紹介された。
【治療経過】血液中にS. parasanguinisが検出され,その後のMRI検査で病変が増大傾向であったため,頚部の病変は椎前部膿瘍と診断された。
口腔内には,21と22の歯根破折,16-18と26部の歯周病変,24-25部のインプラント周囲炎が存在した。これら全ての部位から同菌が検出された。感染制御のため,歯根破折の2歯と歯周病変部の4歯を抜歯した結果,全身症状は徐々に回復し,膿瘍像は縮小した。さらに,退院後に24-25部のインプラントも抜去した結果,最終的には歯面から同菌は未検出となり,膿瘍も完全に消失した。
【考察】本症例では,外傷性歯根破折によって口腔内病変部のS. parasanguinisによる菌血症が生じ,椎前部膿瘍が発症したと,細菌検査で推定されたので,抗菌薬の投与と感染源である口腔内病変部の除去を比較的早期に行えた。深頸部病変の適切な診断と治療には,画像検査のみならず血液検査と口腔内精査も重要であることが示唆された。
(本症例報告に際して,患者の了解を得ている)
(会員外協力者:脳神経センター大田記念病院 脳神経内科 竹丸 誠,下江 豊,栗山 勝)