日本歯周病学会60周年記念京都大会

講演情報

シンポジウム

シンポジウムIV 超高齢社会を生き抜く歯周病予防・治療の考え方

2017年12月17日(日) 08:20 〜 10:20 A会場 (メインホール)

座長:吉成 伸夫(松本歯科大学歯科保存学講座(歯周))

[SY4-4] 糖尿病と認知症-炎症性分子の関与も含めて

里 直行 (国立長寿医療研究センター 分子基盤研究部/大阪大学連携大学院 加齢神経医学)

研修コード:2504

略歴
1992年 大阪大学医学部附属病院加齢医学講座 研修医
1993~1995年 大阪府立成人病センター内科 研修医
1995~1999年 大阪大学大学院医学系生体制御医学加齢医学講座 大学院生
1999~2001年 日本学術振興会特別研究員(PD)
1999~2001年 シカゴ大学神経薬理生理学教室
2001年  シカゴ大学神経薬理生理学教室 リサーチアソーシエート
2001年  大阪大学医学部生体制御医学加齢医学講座 研究生
2002年  大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学講座(寄附講座)助手(老年・腎臓内科併任)
2007年  大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学講座(寄附講座)准教授
2016年  国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター 分子基盤研究部 部長
2017年  大阪大学大学院医学系研究科連携大学院 招へい教授
   現在に至る
糖尿病が認知症の危険因子であることが疫学的研究により支持されている。しかし,どのような機序で糖尿病が危険因子となっているのかは十分に明らかでない。臨床画像・症状からも単純に血管性認知症あるいはアルツハイマー病のどちらかを促進するのではないであろうと考えられる。久山町研究ではインスリン抵抗性があると神経変性突起を伴う老人斑の形成が惹起されることが示唆されている。また我々の糖尿病とアルツハイマー病のかけ合せマウスの結果および剖検脳を用いた研究から,糖尿病はβアミロイドの存在下に神経原線維変化の本態であるタウのリン酸化および神経変性を増悪させることが示唆され,その分子機序の解明を行っている。具体的にはアルツハイマー病モデルマウスであるAmyloid Precursor Protein(APP)マウスにob/obマウスを掛け合わせることにより糖尿病合併アルツハイマー病モデルマウスを作製し,その行動解析,免疫組織学的解析,蛋白解析,およびトランスクリプトーム解析を行っている。その結果,糖尿病とアルツハイマー病に関連して変動する分子群が炎症性分子も含めて明らかになりつつある。現在はその分子群の病態への関与の解析をin vitroおよびin vivoで行っている。また糖尿病合併アルツハイマー病モデルにおいては,糖尿病からアルツハイマー病への病態修飾のみならず,逆にアルツハイマー病が糖尿病の病態をも悪化させることを見出しており,さらなる解析を進めている。将来的にはβアミロイドやタウをターゲットにした先制医療や運動による認知症予防に加えて,糖尿病とアルツハイマー病の悪循環に介在する鍵分子Factor Xの解明に基づく「認知症の創薬」を行っていく。