第83回日本公衆衛生学会総会

セッション情報

公募シンポジウム

シンポジウム4:地理的な困難性を伴う大規模災害への対応から:能登半島地震から学ぶ広域避難対応

2024年10月29日(火) 14:55 〜 16:30 第3会場 (札幌コンベンションセンター 大ホールC)

座長:入江 ふじこ(茨城県土浦保健所)、石井 安彦(北海道釧路総合振興局保健環境部保健行政室(釧路保健所))

令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、広範囲で道路や水道などのライフラインの途絶のため被災地域での避難生活の継続が困難となり、多数の被災者が早期に広域避難を余儀なくされる事態となった。これまで、新潟県中越地震や東日本大震災において広域避難が行われてきたが、多数の被災者を被災直後から遠方の避難先まで様々な方法で広域避難を行う今回の対応は過去の事例とは大きく異なっていた。能登半島地震に関しては、半島という地理的な特性がクローズアップされていたが、多くの半島や山脈を有する我が国においては、今後も広域避難を余儀なくされる自然災害の発生が懸念される。今回の能登半島地震における対応を今後の災害対応にどのように活かすことができるだろうか。
4人のシンポジストの発表は、木村氏には石川県庁における広域避難者に対する保健医療福祉分野での対応について、森井氏には輪島市で支援者として保健活動に携わった立場から広域避難を余儀なくされた現地の状況について、越田氏には広域避難先として多くの被災者を受け入れた金沢市の状況について、尾島氏には東日本大震災における広域避難の中長期的な課題も踏まえた今後の展望について、それぞれお話しいただく。被災者を送り出した輪島市、受け入れた金沢市、全体の調整を担った石川県庁におけるそれぞれの活動報告に加えて、東日本大震災の広域避難のその後を踏まえた発表は広域避難という視点のみならず、災害時の保健医療福祉活動に関する様々な示唆を私たちに与えてくれることが期待される。
能登半島地震の広域避難においては、多数の避難者が災害急性期から複数の地域に移動するという困難なミッションを実行する過程で様々な課題が発生し、地域の関係者や全国からの支援者が連携して乗り越えていった。これらの課題は広域避難に特有のものに加えて、多くは災害時の保健医療福祉活動や高齢化の進む地域に共通する課題が避難先で顕在化したとも考えられる。本シンポジウムで取り上げる災害時の広域避難に関する対応を通じて、災害の保健医療福祉活動をどのように展開していくのか、このシンポジウムに参加する方々が改めて考える機会となることを期待する。