第83回日本公衆衛生学会総会

セッション情報

公募シンポジウム

シンポジウム11:子ども虐待と体罰:予防に向けた取り組みとその背景

2024年10月29日(火) 16:40 〜 18:15 第5会場 (札幌コンベンションセンター 107-108)

座長:馬場 幸子(大阪母子医療センター)、山田 恵子(順天堂大学大学院医学研究科)

児童虐待防止対策は、母子保健・親子保健における重要な課題である。「健やか親子21(第二次)」では、「妊娠期からの児童虐待防止対策」が重点課題に設定されていた他、令和5年に示された「成育医療等基本方針に基づく評価指標」においても、児童虐待対策に関係した評価指標が複数設定されている。児童虐待防止対策は医学領域においても重要だと認識されている。日本小児科学会は「子ども虐待診療の手引き(第2版)」を公表しており、子どもの虐待が小児期の重大な“疾患”であり、再発を繰り返して慢性化する傾向があること示している。虐待を疑わせる状況を発見した際には迅速な診断・治療を行い、子どもの安全と成長を保証する必要がある。
また、虐待以外に両親の離婚や死別、面前DVなども含む「子ども期の逆境体験(Adverse
childhood experience,
ACE)」が子どもの健康リスク・疾患リスクを長期的に上昇させ、早期死亡のリスクを高めることも知られている。
 一方、体罰は、大人から子どもへの暴力という点で虐待と共通点があるものの、一度に受ける身体的痛みが虐待と比較して軽度であるため、保健の領域や医学の領域において明確な対策として掲げられたことは少なかった。しかし、子どもの権利という観点から徐々に対策が勧められている。1989年の国連「子どもの権利条約」や、2019年改正・2020年施行の児童虐待防止法・児童福祉法の改正により体罰は禁止されている。体罰の禁止が社会になじむには、法整備のみならず保健・医学の領域における取組も不可欠である。
 今回のシンポジウムでは、子どもの虐待や体罰をテーマに、現状の把握、法的整理、対応と予防のためのツール、子どもの被虐や加虐の長期健康影響などについて、様々な立場の専門家が情報を共有し、議論を深める予定である。