The 83rd Annual Meeting of Japanese Society of Public Health

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Public Symposium

地域包括ケアと災害医療対策:外国人住民との共生に向けて

Tue. Oct 29, 2024 2:55 PM - 4:30 PM Venue7 (204, Sapporo Convention Center)

Chair:Ryōji Matsumoto, Kumiko Ishida designated speaker:Kiyoko Hattori

我々は地域包括ケアと災害医療対策(後に災害保健医療福祉対策)の連動を提唱してきた。自助共助、地域づくり、生活支援、保健医療福祉の多職種連携・多機関協働が共通基盤のため、相加相乗効果を生むからだ。災害対応の本質は、平時からのネットワークによる地域づくりと生活困難への支援、つまり地域包括ケアである。 地域包括ケアは、元々福祉に近く、高齢者の医療介護連携から、母子、障害、生活困窮者に及び、社会的弱者施策の柱となり、地域共生社会の実現へ向かう。
 今回は、災害時要配慮者として外国人住民に焦点を当てた。外国人は社会的弱者の反面、子どもの顕著な増加と20、30代が多いため地域の担い手となり、多様な人達が共生できる地域づくりに繋がり、地域包括ケアの社会資源の側面も持つ。
 日本は少子高齢化・生産年齢人口減少による深刻な労働力不足問題に直面している。2023年末、在留外国人数は前年比で10%強増加し、過去最多の342万人となった(法務省)。これまで正式に移民政策を認めてこなかった日本は、外国からの労働者なしでは社会が成り立たず、外国人が地域に定住し、家族を持つことは当然の日常となっている。2019年特定技能在留資格での外国人材受入が始まり、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」と多文化共生社会の整備が進められてきた。国際貢献としての技能実習制度は、その実体との乖離から、当初からの労働力確保の目的を明確にした育成就労制度への移行が審議されている。今の状況では、不十分な法整備のため、自治体毎の外国人数、産業構造、予算、首長の考え方等で、外国人の生活支援に格差がある。外国人に特化した支援体制では限界がみられ、地域住民であり、地域包括ケアの対象でもある外国人との言葉・文化や情報の壁を埋め、多様な人たちが活躍できる地域づくりをすることこそ大切だ。
 シンポジウムでは、感染症も含め災害という切り口から外国人を捉える。災害では平時の状況が増幅されるからだ。熊本地震での実際の対応、結核やコロナ等感染症での現状、公衆衛生や福祉からみた様々な課題を明らかにし、災害時公衆衛生支援より服部希代子保健所長を指定発言者に加え、外国人を含めた多様な人達が活躍できる共生の地域づくりと地域包括ケアを議論する機会としたい。