*黒田 佑次郎1 (1. 国立長寿医療研究センター 研究所 予防科学研究部)
セッション情報
公募シンポジウム
シンポジウム21:実装科学研究のデザインと事例
2024年10月30日(水) 09:00 〜 10:35 第3会場 (札幌コンベンションセンター 大ホールC)
座長:島津 太一(国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)、竹原 健二(国立成育医療研究センターこどもシンクタンク)
実装科学 implementation science とは、市民、患者、保健医療従事者、組織、地域などのステークホルダーと協働しながら、学際的なアプローチによりエビデンスに基づく介入(evidence-based intervention、EBI)を実践し、届け、健康アウトカムを改善し、健康格差是正を目指す学問領域である。実装科学が目指す EBI 実装のゴールは、公衆衛生のレベルで個人の健康アウトカムを改善することであり、そのプロセスの指標が実装アウトカムとして測定される。Proctorらは、EBI についてのステークホルダーの認識(①受容性、②適切性、③実施可能性)、組織による EBI 導入の決定(④採用)、EBI 実施にかかる⑤費用、実施手順が守られている度合い(⑥忠実度)、必要な個人に EBI が届いているか(⑦浸透度)、EBI 実施の⑧持続可能性を、実装アウトカムとして提唱している(Proctor et al, Adm Policy Ment Health. 2011)。
実装科学では、情報や介入資材を特定の対象に届けるための普及研究 dissemination research、EBI を、効果的、効率的に日常の保健医療福祉活動に組み込み、定着させる方法(実装戦略 implementation strategy)を開発、検証し、実装の”How”についてのエビデンスを構築する実装研究 implementation research が行われる。実装研究は、EBI を実装したい現場における実装の阻害・促進要因を特定し(文脈の理解)、阻害・促進要因に対処するための実装戦略の開発、実装戦略の実施可能性試験、実装戦略の効果検証試験へと進む。実装の阻害・促進要因は、受益者、保健医療従事者、組織のリーダー、政策決定者などにそれぞれに存在するため、対応する実装戦略も多層的なものとなる。
本シンポジウムでは、健康格差是正のための実装科学ナショナルセンターコンソーシアム(N-EQUITY)により支援が行われた実装研究のデザインと事例を紹介する。各演者より、地域、職域、医療の異なるセッティング、異なるEBIの社会実装の取り組みを、実装科学を共通言語として用いて提示し、「実装」の”How”を研究する視点を参加者の皆さんと共有したい。
*佐々木 那津1、今村 幸太郎2 (1. 東京大学大学院 医学系研究科 精神保健学分野、2. 東京大学大学院 医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座)
*齋藤 順子1 (1. 国立がん研究センター がん対策研究所 行動科学研究部)
*藤原 雅樹1 (1. 岡山大学病院 精神科神経科)