第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム2
今後期待されるうつ病への新規治療法について考える

2023年6月22日(木) 08:30 〜 10:30 E会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G301+G302)

司会:坪井 貴嗣(杏林大学医学部付属病院精神神経科学教室), 内田 裕之(慶應義塾大学病院)
メインコーディネーター:坪井 貴嗣(杏林大学医学部付属病院精神神経科学教室)

うつ病はコモンディジーズと認知されて久しくなった一方、現在の標準的な治療を行っても約1/3が難治化することが報告されている。また、寛解・回復とその維持がうつ病の治療目標であることは言うまでもないが、うつ病は再発・再燃率が高い疾患であり、その結果、就学や就労など当事者の社会機能、そして人生に強い影響を与えているという現状がある。2016年に発表された日本うつ病学会によるうつ病治療ガイドライン第2版を参照すると、うつ病に推奨される治療は重症度によって異なるものの、総じて基礎的介入(支持的精神療法と心理教育)、抗うつ薬、電気けいれん療法が中心であり、認知行動療法などのエビデンスのある精神療法は必要に応じて推奨されるものとなっている。確かにうつ病は異質性・多様性に富む疾患であり、またバイオマーカーが乏しいため診断に苦慮する当事者がいるのは事実であるが、入念に鑑別を行いガイドラインに準じた標準的な治療を行っても奏効しないうつ病当事者が一定数存在する。そこで本シンポジウムでは、今後期待されるうつ病への新規治療について考えると題して、症状が残遺し苦しんでいるうつ病当事者の光になるようなシンポジウムになればと考えている。具体的には、アメリカ食品医薬品局ではうつ病に対しても認可され本邦でも臨床研究が進んでいるケタミンなどの解離性麻酔薬、これまでマジックマッシュルームなどの負の側面が目立っていたが昨今うつ病のみならず様々な精神疾患への応用が期待されている精神展開剤、従来のモノアミン仮説に基づく選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬などの抗うつ薬とは異なる炎症仮説に基づいた治療薬として注目される炎症標的新規抗うつ薬、現在は修正型電気けいれん療法と反復経頭蓋磁気刺激療法のみが本邦でうつ病に承認されているがニューロモデュレーションの新たな選択肢として注目されている次世代磁気刺激療法や磁気けいれん療法、有用性は実証されているものの普及が難しい従来型の認知行動療法に代わりコロナ禍でさらにニーズが増した遠隔認知行動療法や診断が未確定あるいは互いに併存していても実行できる統一プロトコルによる認知行動療法などの新しい精神療法、についてその道の最前線にいるシンポジストに講演いただく。それを受けてうつ病当事者の方に当事者が求めるうつ病治療や今後の精神医療への期待について指定発言をいただき、シンポジストやフロア全体で明日からのうつ病治療について活発に討議し、うつ病診療の未来に明るい展望を見出せるものにできればと期待している。