第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム90
精神科における臨床神経病理カンファレンスとその意義

2023年6月24日(土) 08:30 〜 10:30 P会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G416+G417)

司会:入谷 修司(桶狭間病院藤田こころケアセンター附属脳研究所附属脳研究所), 河上 緒(順天堂大学医学部大学院精神医学講座)
メインコーディネーター:入谷 修司(桶狭間病院藤田こころケアセンター附属脳研究所附属脳研究所)
サブコーディネーター:河上 緒(順天堂大学医学部大学院精神医学講座)

医学教育のなかで最初に学ぶのは、解剖学、生理学、そして病理学である。病理学は、病気の原因とその機序を明らかにすることを目的としている。現在の精神医学の礎をつくったドイツのエミール・クレペリンたちも、精神神経疾患の病因病態を解明するツールとして脳組織学的研究に打ち込んだ。そのような潮流の中で、弟子であるフランツ・ニッスルやアロイス・アルツハイマー、コルビン・ブロードマンといった精神科医達がおおきな脳病理研究の業績をのこしている。しかし、その後さまざまな要因から一時は精神科において神経病理学的なアプローチが衰退したが、リスク遺伝子の発見が相次ぐ近年、個々の変異例に対し,病変の局在,質的・量的変化を検証し,疾患特異的な特性を視覚的に捉えられる可能性が出てきたことから,神経病理学研究は病態解明の上で再び脚光を浴びている。臨床においても病理、病理から臨床といった考察は、おしなべて医学のうえでは不可欠な思考様式である。その意味で精神医学における臨床神経病理学は、臨床でみた患者の脳でなにが起きていたかを探索し、そこから再度臨床を振り返ることで病因病態をよく理解でき、臨床伎倆を向上させる唯一の方法である。そして、確認された病理像は医学の進歩として確固たる証を残すことができる。本シンポジウムでは、精神科における様々な病態とその臨床病理を検討することで、どのようなことがわかり、それがどのように今後の臨床や疾病理解、病態解明、治療に繋がるか、という点について各演者に具体的な症例を挙げて提示していただき、臨床神経病理の有意義性を共有する構成とした。1)鳥居洋太(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学)「遺伝子変異を有する統合失調症の脳病理は?」 遺伝背景の明確な統合失調症の脳病理から病因を考える。 2)関口裕孝 (桶狭間病院こころケアセンター附属脳研究所)「臨床診断は双極性障害だがその脳病理は?」 双極性障害と診断されうる脳病理の背景を考える。 3)池田研二 (東京都医学研)「アルコール依存症・アルコール精神病の脳病理と治療は?」 アルコールが脳にあたえるインパクトを脳病理から考え、回復の可能性について考える。 4)河上緒 (順天堂大学精神医学)「臨床症状は摂食障害だがその脳病理は?」摂食障害患者の脳病理から、その生物学的要因について考える。 5)藤城弘樹 (名古屋大学大学院医学系研究科精神医療学)「臨床症状は高齢期のうつ病/身体症状症/アパシーだがその脳病理は?」高齢期にみられる気分や不安の脳病理について考える。 6)指定発言新井哲明 (筑波大学精神科)「臨床から脳病理へ、脳病理から臨床へ」精神医学教育や研究、臨床における臨床神経病理学の重要性