The 120th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

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委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム21
認知症の医・倫理・法

Sat. Jun 22, 2024 8:30 AM - 10:30 AM J会場 (札幌コンベンションセンター 2F 201+202会議室)

司会:品川 俊一郎(東京慈恵会医科大学精神医学講座),井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所)
メインコーディネーター:井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所)
サブコーディネーター:池田 学(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)

委員会:認知症委員会

インフォームド・コンセントの概念の広がりとともに、判断力が不十分な者が自らの医療の選択に関わることの意義が認識されるようになった。各種ガイドラインの整備と相まって、精神医療の領域でも、判断力が不十分な者が医療上の意思決定に参加するための「意思決定支援」を重んじる価値観が共有された。しかしながら、判断能力が不十分とされ、非自発的入院の適応となった者が表示する意思が、治療者の意向と一致する場合と一致しない場合とで、同じ患者の意思の取り扱いが異なる場合がある。つまり、一致する場合には本人の意思として尊重し、一致しない場合には治療同意能力の不十分を理由に退けるといった、恣意的な取り扱いが起こり得る。そしておそらく、判断能力が不十分とされる者の意思をどのように取り扱うことにも、倫理的課題が生じるだろう。日常的に求められるこのような判断を合議によって行うために、倫理委員会を設置する医療機関が増えた。その成り立ちから、倫理委員会は法・倫理・医療安全の課題を扱うはずだが、議論は医療安全に傾きがちで、そもそも誰の安全なのかという視点さえ見失われてはいないだろうか。精神医療で扱う能力は、精神病床への入院に同意する能力、治療同意能力、刑事責任能力、財産管理能力など幅広い。それら相互の関係は一元的に整理されるものではないが、臨床では、これらの課題を同時に抱える患者に出会う。精神科臨床のなかで出会うことが増えた認知症患者を通して、医・倫理・法にまたがる領域の課題を整理することを意図して、本シンポジウムを企画した。秋葉悦子先生からは非自発的入院と患者の意思決定、齋藤正彦先生からは認知症医療の視点から倫理委員会の役割について、釜江和恵先生からは 認知症初期集中支援チームの法的・倫理的課題、高木俊輔先生からは認知機能が低下した人の自動車運転、村松太郎先生からは認知症と刑事責任能力について論じていただく。