第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本小児理学療法学会

日本小児理学療法学会
発達障害の基本的な理解と理学療法士の役割

2016年5月28日(土) 18:50 〜 19:50 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

司会:中徹(群馬パース大学保健科学部理学療法学科)

[KS1048-1] 発達障害の基本的な理解と理学療法士の役割

新田收 (首都大学東京健康福祉学部理学療法学科)

「発達障害」が一般的に知られるようになったのは最近のことである。1980年代以降,学齢期になり学習についていけない,落ち着いて席に座っていることができない,といった児童が目立つといった話題がマスコミに取り上げるようになった。こうしたことから保護者の間にも「発達障害」に対する認識が広まっていった。我が国においては「発達障害」が広く認識されたのは,2004年12月に制定された発達障害支援法の影響が大きい。支援法は,「発達障害の定義と社会福祉法制における位置づけを確立し,発達障害者の福祉的援助に道を開くために制定された」としている。
こうした状況を背景として,近年「発達障害」に対し理学療法処方がなされることが多くなってきている。ここで我々理学療法士に何ができるのか考えてみたい。
従来から「発達障害」はコミュニケーション,あるいは社会性の障害として認識されることが多いが,同時に運動のぎこちなさや不器用さが指摘されている。個人差のレベルを超え,学習や日常生活に支障を及ぼすレベルであり,運動に問題を示すことがある。つまり定義上は運動機能に関する記述は見られないが,臨床的には発達障害に共通して身体機能において類似した特徴が報告されている。発達障害に関連性の強い身体機能障害として,感覚障害,ボディーイメージ・運動イメージの障害,姿勢制御の障害,協調運動障害がある。これらの機能障害は互いに関連しあい,影響しあい発達障害に見られる姿勢と運動の特徴を形成している。ここに介入の糸口がある。
人は社会的な生き物であると仮定するならば,コミュニケーションの方法を言語に限定して考えることにこそ無理がある。人の運動はすべて,コニュニケーションの手段であり,姿勢と運動の安定性は社会性の基礎を構築している。このことから理学療法士が「発達障害」に対し姿勢と運動の安定化を目的とした介入を行うことの役割は大きい。