第51回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会

日本心血管理学療法学会
心不全における骨格筋障害の考え方と対策

Sat. May 28, 2016 1:40 PM - 2:30 PM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:近藤和夫(北光記念病院理学療法科)

[KS1060-1] 心不全における骨格筋障害の考え方と対策

沖田孝一 (北翔大学大学院生涯スポーツ学研究科)

1.心不全における運動耐容能規定因子
心不全患者は,容易に疲労を訴え,身体活動が制限される。運動耐容能を改善するために,心機能を改善する強心薬や血管拡張薬が開発されたが,血行動態は改善するものの運動耐容能は向上しなかった。これらの知見を契機に,心不全研究のターゲットは,中心循環から末梢循環,そして骨格筋へと変遷し,様々な器質的・機能的骨格筋障害が明らかにされ,それらが運動耐容能低下に密接に関連していることが示されている。
2.骨格筋量・質の重要性
最大酸素摂取量や最大筋力が,健常者および心不全患者の強力な予後規定因子であることが示されている。その理由を説明する知見として,骨格筋量や抗酸化酵素量が動物種の寿命に深く関わっていること,さらに運動によって抗酸化酵素の誘導が亢進すること等があげられる。さらに最近では,種々のマイオカイン(骨格筋由来サイトカイン)の発見などoverall healthを支える内分泌器官としての骨格筋の重要性が認識されつつあり,この学術領域は他の慢性消耗性疾患においても共通のテーマになってきている。
3.心不全における骨格筋障害への対策
心不全において骨格筋障害が起こる原因として,循環不全を発端とする交感神経系およびRAS系過剰活性などの神経液性因子,炎症,酸化ストレス,アポトーシス,さらに成長ホルモン/IGF-1抵抗性,異化/同化の不均衡等が考えられており,それらを身体不活動と栄養障害が修飾する。RAS系阻害薬およびβ遮断薬は,確立された心不全治療薬であるが,これらの薬剤は,骨格筋障害を改善することが示されている。最近では,成長ホルモン/IGF-1抵抗性や異化/同化の不均衡の病態に対して,蛋白同化ホルモン投与の有効性が示されており,さらにグレリン(成長ホルモン分泌促進因子受容体の内因性リガンド)投与や動物モデルでは分子標的薬の有効性も検証されている。