第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)03

2016年5月27日(金) 17:10 〜 18:10 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:平野孝行(名古屋学院大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[O-ED-03-6] 理学療法士における診療ガイドラインへの意識・態度の状況および関連する要因の検討

藤本修平1,2, 今法子1,3, 高杉潤4, 中山健夫1 (1.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻, 2.株式会社メドレーメディア統括部, 3.河北リハビリテーション病院, 4.千葉県立保健医療大学健康科学部)

キーワード:EBM, エビデンス診療ギャップ, 理学療法教育

【はじめに,目的】診療ガイドライン(以下,CPG)は,根拠に基づいた医療の実践(以下,EBP)の促進に有用であり(Fritz, et al., Med Care, 2007),臨床現場における普及が望まれる。諸外国の報告でその意識は高いことが報告されているが(Bernhardsson, et al., Phys Ther, 2014),日本の状況は不明である。状況によってはCPGの普及方法を検討する必要があるため,把握することは有用である。本研究の目的は,本邦の理学療法士(以下,PT)において,CPGに対する意識・態度および利用状況とそれに関連する要因について,調査することとした。


【方法】本調査は,平成26年10月に実施した。対象は,平成26年6月時点で千葉県理学療法士会に所属し,臨床施設に在籍しているPT2982名からランダムサンプリングした1000名とした。郵送調査法による質問紙調査を実施し,回答期限は2週間,リマインダーハガキの送付は1回とした。調査は,先行研究(Jette, et al., Phys Ther, 2003;Bernhardsson, et al., Phys Ther, 2014)を参考に作成し,基本的属性(経験年数,最終学歴,研究経験など)とCPGに対する意識・態度などに関する計43項目で構成された質問紙を用いた。回答は,5件法(強く思う,思う,どちらでもない,思わない,強く思わない)または3件法(はい,部分的に,いいえ)の選択方法を採用した。解析は,各質問項目について記述統計を算出し,さらに基本的属性とCPGへの意識・態度の関連性を検証するために,ロジスティック回帰分析を用いた。解析には,統計ソフトR2.8.1(CRAN)およびJMP.Pro11(SAS Institute. Inc)を用い,有意水準は5%とした。


【結果】質問紙の回収率は39.6%であり,有効回答数は384件であった。CPGへの意識・態度について,“CPGを利用している”に対して,「はい」と答えた者は29.2%であった。“CPGを利用することが重要である”,“CPGは臨床において有用である”に対して「思う」「強く思う」と答えた者は,それぞれ54.9%,13.3%であった。CPGへの意識・態度と基本的属性の関連について,研究に携わっている者は,携わっていない者よりも,CPGを意識している(オッズ比(OR)=2.34,95%CI=1.19-4.72),CPGを利用している(OR=3.02,95%CI=1.47-6.32),意識しているなどの多くの質問項目に“思う”と回答する傾向にあった。その他に関連する基本的属性は,経験年数や最終学歴,認定理学療法士の取得の有無などが挙げられた。


【結論】CPGを利用している者は,諸外国のPT(約88%,Bernhardsson, et al.,Phys Ther, 2014)と比較して少なかった。また,CPGへの意識・態度と研究への携わりは関連していたが,本研究は横断研究であるため因果関係には言及できない。本研究の限界として,千葉県のPTが全国のPTを反映しているかは不明であることが挙げられる。今後はCPGの普及促進を目的に,CPGへの意識や態度と関連する要因に着目し,検証を進めていくことが課題である。