第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)06

2016年5月28日(土) 17:10 〜 18:10 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:仙波浩幸(豊橋創造大学 保健医療学部)

[O-ED-06-2] 理学療法学科入学4か月間での学習と生活面の満足度

久保晃1, 谷浩明1, 小林薫1, 小野田公1, 丸山仁司1,2 (1.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.国際医療福祉大学副学長)

キーワード:学習満足度, 生活満足度, 新入生

【はじめに,目的】

理学療法士養成における学生の満足度に関しては,通常最終学年で経験する総合臨床実習に関する報告が多い。慣れ親しんだ学校を出て,施設の中で実体験を積む。学生は心身ともに特別な緊張感に包まれることから,研究の対象となりやすい。一方,通常の学生生活について満足度を検証しているものは少ない。学部4年間の生活は一様ではなく,各学年,期で特徴が存在すると考えられる。

そこで本研究の目的は,学習面と生活面で,Visual Analogue Scale(以下,VAS)を用いて入学から4か月間での1年前期末における満足度を生活様式も含めて男女別に明らかにすることとした。

【対象と方法】

対象は平成27年度に国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科に入学し,平成27年7月23日の調査に協力の得られた103名とした。調査実施時の男女別年齢の平均±標準偏差は男性51名,18.4±0.6歳,女性52名,18.5±0.8歳であった。

入学から7月末までを振り返っての学習面の満足度(以下,学習満足度)と生活面の満足度(以下,生活満足度)の学生による評価を記名式でVASを用いて実施した。

満足度の比較はWilcoxon符号付順位検定,性差はMann-Whitney検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

男性の学習満足度は64±19ポイント,生活満足度は70±20ポイントで生活満足度が有意に高かった。女性の学習満足度は66±18ポイント,生活満足度は73±19ポイントで男性同様,生活満足度が有意に高かった。

生活様式別の学習満足度では女性で,一人暮らしの63±18ポイントに比較して自宅通学者の75±13ポイントが有意に高かった。生活満足度は男女とも一人暮らしと自宅通学者で有意差は認められなかった。

【考察】

本研究では今まで明らかになっていなかった入学から前期末までの4か月間の満足度を検討した。学習満足度に比較して生活満足度が高く,男女とも学習満足度は約65ポイント,生活満足度は約70ポイントといずれの満足度も高かった。しかし,学習満足度は女性の一人暮らしでは自宅通学者に比較して低く,有意差が認められた。自宅通学者は高校生活の延長に近い生活リズムである。一方,入学後に一人暮らしを開始した学生は買い物,食事,洗濯など自己で生活管理を行う環境で試験期間を迎えた時期であった。その影響が学習への満足度の相違に反映した可能性があり,特に女性に顕著に現れることが示唆された。

今回の満足度調査は単年度かつ単一のキャンパスだけのもので,この点は本研究の限界である。

【理学療法学研究としての意義】

学生生活を円滑にスタートさせることは大変重要である。満足度の把握から,学生生活の充実を伺い知ることができる。一人暮らし女性の学習満足度は有意に低く,支援を実施する必要があることが示唆された。