第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本心血管理学療法学会 一般演題口述
(心血管)01

2016年5月27日(金) 10:00 〜 11:00 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:渡辺敏(聖マリアンナ医科大学病院 リハビリテーション部), 高橋哲也(東京工科大学 医療保健学部)

[O-HT-01-1] 代謝当量は安静時ならびに運動時の心拍数から推定可能か?

山本周平1, 石田昂彬1, 三澤加代子1, 酒井康成1, 大平雅美2, 矢島史恵3, 樋口智子4, 山崎佐枝子4, 吉村康夫1 (1.信州大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.信州大学医学部保健学科, 3.信州大学医学部附属病院看護部, 4.信州大学医学部附属病院循環器内科)

キーワード:METs, 心拍数, 心疾患

【はじめに,目的】

心臓リハビリテーションを実施するにあたり,運動耐容能は運動負荷を把握する上で極めて重要な指標である。通常,運動耐容能は代謝当量(METs)で表され,METsを算出するには心肺運動負荷試験(CPX)が必要であるが,急性期ではCPXが施行困難な場合も多い。そこで近年,安静時ならびに運動時の心拍数(HR)からMETsを推定する方法が報告された(Wicks, J. R. Med Sci Sports Exerc. 2011)。しかし,この先行研究では多くの疾患が含まれており,心疾患患者においても推定可能か不明である。そこで,本研究では心疾患患者を対象として心拍数からMETsが推定可能か調査することを目的とした。

【方法】

2012年4月から2015年9月までの間にCPXを実施した18歳以上の患者159例のうち,虚血性心疾患,弁膜症および心不全の123例を対象とした。測定項目は,患者背景因子として年齢,性別,診断名,左室駆出率(LVEF),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)および服薬状況を診療録より調査した。CPXのデータとして,安静時および運動負荷1分ごとのHRとMETsを調査した。解析は,先行研究に準じてHR index(運動時HR/安静時HR)とHR net(運動時HR-安静時HR)を算出し,METsと各指標の相関はpearsonの積率相関係数を用いて算出した。また,従属変数をMETs,独立変数をHR indexおよびHR netとした重回帰分析をそれぞれ実施し,予測式の算出と寄与率を評価した。

【結果】

123例から得られた1057個のデータを解析対象とした。平均年齢は58.9±12.3歳,男性73.2%,LVEF57.0±15.6%,BNPの中央値73.5(四分位範囲38.9-151.5)pg/mL,β遮断薬の内服率67.5%であった。Pearsonの積率相関係数の結果,METsは運動時HR,HR indexおよびHR netと有意な正の相関を認めた。HR indexを独立変数とした重回帰分析の結果,予測式としてMETs=3.0×HR index-0.5(adjusted R2=0.544)が,HR netではMETs=0.05×HR net+2.2(adjusted R2=0.626)が算出された(すべてP<0.0001)。また,β遮断薬の有無で追加解析を行った結果,HR indexではβ遮断薬ありとなしでそれぞれMETs=3.5×HR index-1.2(adjusted R2=0.528)とMETs=2.6×HR index-0.1(adjusted R2=0.502),HR netではβ遮断薬ありとなしでそれぞれMETs=0.05×HR index+2.1(adjusted R2=0.601)とMETs=0.05×HR index+2.4(adjusted R2=0.601)であった(すべてP<0.0001)。

【結論】

本研究の結果から,HR indexとHR netからMETsを推定可能だが,β遮断薬の影響はHR netの方が少なく,おおよそ0.05×HR net+2から推定可能なことが示された。