[O-KS-07-4] 筋疲労時の不快情動における左右側頭前部領域は一次運動野と機能的同期を増加させる
Keywords:筋疲労, 脳波コヒーレンス, 疲労感
【はじめに,目的】
筋疲労に関連する脳領域は明らかになっている(Duinen 2010)。近年では筋疲労が生じる時の中枢神経における機能的な同期性が報告されてきているが(Jiang 2012),これらの先行研究では筋疲労の指標を筋力低下としているため,心理的疲労に関連する中枢神経の機能的な同期生は明らかになっていない。本実験では筋疲労時に発生する疲労の知覚に注目し,その時の一次運動野との機能的な同期性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常成人男女10名(男性:1名 女性:9名,平均年齢:25.14±8.45)を対象とした。本実験では握力計(EG-210,EG-290,酒井医療社製)を用いて等尺性収縮を行わせて,疲労の知覚を生じさせた。脳波の測定にはActiveTwo BioSemi electrode system(BioSemi社製)を用いた。脳波は国際10-20法に基づき64チャンネルとした。運動の強度は40% Maximum Voluntary Contractionとした。被験者には疲労感が生じた瞬間に非利き手でボタンを押させた。さらに疲労感を有した状態のまま課題を継続させ,被験者は疲労困憊と決断した時に自らの意志によって筋を弛緩させることで課題は終了とした。脳波解析はThe EMSE Software Suite(Source Signal Imaging社製)を用いた。脳波の周波数解析としてβ波域(14-30Hz)に注目した。課題開始直後は脳波が安定しないため1秒後から5秒間(開始直後),疲労を報告までの5秒間(疲労前),疲労を報告した1秒後から5秒間(疲労直後),課題終了までの5秒間(課題終了)をそれぞれ抽出した。脳波の部位間関連性を求めるため皮質間コヒーレンス解析を用いた。脳波コヒーレンスは,脳の領域全体のネットワークの形成と機能の統合に関する情報をもたらす。本実験では左右側頭葉と左一次運動野を関心領域として,一次運動野との機能的な同期性について調査した。統計解析はWilcoxon符号順位検定を用いた。有意水準は5%以下とした。
【結果】
左一次運動野と右側頭領域の機能的同期性は課題終了時と開始直後と疲労直後を比較すると有意な増加を認めた(p<0.01)。左一次運動野と左側頭領域は課題終了時と疲労直後を比較すると有意な増加を認めた(p<0.05)。つまり,筋疲労が蓄積して運動の終了を決定づける要因として左右側頭前部と一次運動野は機能的な同期性は強まることが示唆された。
【結論】
筋疲労が生じるまでの知覚は,深刻な筋肉の損傷を防止するように予測された機構である。継続した運動によって早期に生じる疲労感を生み出すメカニズムを理解することは,スポーツやリハビリテーションにおけるトレーニングの運動強度の設定にとってとても重要である。
筋疲労に関連する脳領域は明らかになっている(Duinen 2010)。近年では筋疲労が生じる時の中枢神経における機能的な同期性が報告されてきているが(Jiang 2012),これらの先行研究では筋疲労の指標を筋力低下としているため,心理的疲労に関連する中枢神経の機能的な同期生は明らかになっていない。本実験では筋疲労時に発生する疲労の知覚に注目し,その時の一次運動野との機能的な同期性について明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常成人男女10名(男性:1名 女性:9名,平均年齢:25.14±8.45)を対象とした。本実験では握力計(EG-210,EG-290,酒井医療社製)を用いて等尺性収縮を行わせて,疲労の知覚を生じさせた。脳波の測定にはActiveTwo BioSemi electrode system(BioSemi社製)を用いた。脳波は国際10-20法に基づき64チャンネルとした。運動の強度は40% Maximum Voluntary Contractionとした。被験者には疲労感が生じた瞬間に非利き手でボタンを押させた。さらに疲労感を有した状態のまま課題を継続させ,被験者は疲労困憊と決断した時に自らの意志によって筋を弛緩させることで課題は終了とした。脳波解析はThe EMSE Software Suite(Source Signal Imaging社製)を用いた。脳波の周波数解析としてβ波域(14-30Hz)に注目した。課題開始直後は脳波が安定しないため1秒後から5秒間(開始直後),疲労を報告までの5秒間(疲労前),疲労を報告した1秒後から5秒間(疲労直後),課題終了までの5秒間(課題終了)をそれぞれ抽出した。脳波の部位間関連性を求めるため皮質間コヒーレンス解析を用いた。脳波コヒーレンスは,脳の領域全体のネットワークの形成と機能の統合に関する情報をもたらす。本実験では左右側頭葉と左一次運動野を関心領域として,一次運動野との機能的な同期性について調査した。統計解析はWilcoxon符号順位検定を用いた。有意水準は5%以下とした。
【結果】
左一次運動野と右側頭領域の機能的同期性は課題終了時と開始直後と疲労直後を比較すると有意な増加を認めた(p<0.01)。左一次運動野と左側頭領域は課題終了時と疲労直後を比較すると有意な増加を認めた(p<0.05)。つまり,筋疲労が蓄積して運動の終了を決定づける要因として左右側頭前部と一次運動野は機能的な同期性は強まることが示唆された。
【結論】
筋疲労が生じるまでの知覚は,深刻な筋肉の損傷を防止するように予測された機構である。継続した運動によって早期に生じる疲労感を生み出すメカニズムを理解することは,スポーツやリハビリテーションにおけるトレーニングの運動強度の設定にとってとても重要である。