[O-KS-16-4] ランニング中における後足部,中足部,前足部間の協調性パターンの定量化
キーワード:協調性パターン, ランニング, 足部
【はじめに,目的】
近年,健全なライフスタイルを維持するためにランニングの人気が高まっている一方で,オーバーユース障害も数多く発生している。障害発生メカニズムの観点から,先行研究は後足部回内と下腿内旋のタイミング,相互相関係数を用いて運動連鎖を検証している。しかし,これまでの検証方法ではセグメント間の相互作用や2つのセグメントの関節角度変化の振幅を捉えることができず,障害発生メカニズムを詳細に把握することは困難であるとされている。さらに,後足部と下腿間だけでなく,足部内構造の異常も障害発生の一因になることが指摘されている。そこで,本研究はランニング中の後足部,中足部,前足部間の詳細な相互作用,‘協調性パターン’を定量化することを目的とした。
【方法】
対象者は健常成人男性11名とした(年齢22.7±3.0歳,身長172.1±4.9cm,体重65.5±7.9kg)。課題はトレッドミル(AUTO RUNNER AR-100)上でのランニングとし,各対象者に対し10回計測した。3DFoot modelに準じて右足部に反射マーカーを貼付し,3次元動作解析装置(VICON MX)で計測した。後足部,中足部,前足部の回内/回外角度を算出し,立脚期を時間正規化した。協調性パターンの定量化にはModified Vector Coding Techniqueを使用し,2つのセグメントの関節角度変化の大きさと運動方向を表すcoupling angleを算出した。Coupling angleの値は,Anti-phase(2つのセグメントが逆位相に同等の関節角度変化量で動く),In-phase(2つのセグメントが同位相に同等の関節角度変化量で動く),Proximal-phase(近位セグメントの関節角度変化量がより大きい),Distal-phase(遠位セグメントの関節角度変化量がより大きい)の協調性パターンに吸収期と推進期で分類された。データ解析はScilab(5.5.3)を用いた。
【結果】
吸収期の後足部-中足部の協調性パターンは,主にIn-phase(後足部・中足部回内;吸収期全体の97.8%の割合)を示していた。推進期ではIn-phase(後足部・中足部回外;推進期全体の62.3%の割合)から開始し,後半はDistal-phase(中足部回外が優位に動く;推進期全体の37.3%の割合)を示していた。中足部-前足部の協調性パターンは,吸収期でProximal-phase(中足部回内が優位に動く;吸収期全体の54.3%の割合),推進期でProximal-phase(中足部回外が優位に動く;推進期全体の64.2%の割合)が多くを占めていた。
【結論】
本研究はランニング中の足部セグメント間の協調性パターンを詳細に定量化した新たな知見である。これまでに,足部セグメントは吸収期に回内,推進期に回外運動パターンを示すことが報告されている。本研究より,2つのセグメントの関節角度の変化量を加味すると吸収期や推進期で足部セグメント間の協調性パターンが異なることが示唆された。この知見は,障害発生メカニズムを考える上でオーバーユース障害を有する者と比較できる基礎的データに成り得る。
近年,健全なライフスタイルを維持するためにランニングの人気が高まっている一方で,オーバーユース障害も数多く発生している。障害発生メカニズムの観点から,先行研究は後足部回内と下腿内旋のタイミング,相互相関係数を用いて運動連鎖を検証している。しかし,これまでの検証方法ではセグメント間の相互作用や2つのセグメントの関節角度変化の振幅を捉えることができず,障害発生メカニズムを詳細に把握することは困難であるとされている。さらに,後足部と下腿間だけでなく,足部内構造の異常も障害発生の一因になることが指摘されている。そこで,本研究はランニング中の後足部,中足部,前足部間の詳細な相互作用,‘協調性パターン’を定量化することを目的とした。
【方法】
対象者は健常成人男性11名とした(年齢22.7±3.0歳,身長172.1±4.9cm,体重65.5±7.9kg)。課題はトレッドミル(AUTO RUNNER AR-100)上でのランニングとし,各対象者に対し10回計測した。3DFoot modelに準じて右足部に反射マーカーを貼付し,3次元動作解析装置(VICON MX)で計測した。後足部,中足部,前足部の回内/回外角度を算出し,立脚期を時間正規化した。協調性パターンの定量化にはModified Vector Coding Techniqueを使用し,2つのセグメントの関節角度変化の大きさと運動方向を表すcoupling angleを算出した。Coupling angleの値は,Anti-phase(2つのセグメントが逆位相に同等の関節角度変化量で動く),In-phase(2つのセグメントが同位相に同等の関節角度変化量で動く),Proximal-phase(近位セグメントの関節角度変化量がより大きい),Distal-phase(遠位セグメントの関節角度変化量がより大きい)の協調性パターンに吸収期と推進期で分類された。データ解析はScilab(5.5.3)を用いた。
【結果】
吸収期の後足部-中足部の協調性パターンは,主にIn-phase(後足部・中足部回内;吸収期全体の97.8%の割合)を示していた。推進期ではIn-phase(後足部・中足部回外;推進期全体の62.3%の割合)から開始し,後半はDistal-phase(中足部回外が優位に動く;推進期全体の37.3%の割合)を示していた。中足部-前足部の協調性パターンは,吸収期でProximal-phase(中足部回内が優位に動く;吸収期全体の54.3%の割合),推進期でProximal-phase(中足部回外が優位に動く;推進期全体の64.2%の割合)が多くを占めていた。
【結論】
本研究はランニング中の足部セグメント間の協調性パターンを詳細に定量化した新たな知見である。これまでに,足部セグメントは吸収期に回内,推進期に回外運動パターンを示すことが報告されている。本研究より,2つのセグメントの関節角度の変化量を加味すると吸収期や推進期で足部セグメント間の協調性パターンが異なることが示唆された。この知見は,障害発生メカニズムを考える上でオーバーユース障害を有する者と比較できる基礎的データに成り得る。