第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題口述
(基礎)22

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:臼田滋(群馬大学 大学院保健学研究科)

[O-KS-22-1] センサを用いた歩行時の体幹・骨盤動揺の評価

江原裕作1,2, 佐々木雄太3, 柊幸伸4 (1.野田病院リハビリテーションセンター, 2.国際医療福祉大学大学院, 3.上尾二ツ宮クリニック, 4.了德寺大学健康科学部理学療法学科)

キーワード:加速度センサ, 運動の変化指標, 運動の量的指標

【はじめに,目的】

臨床における歩行分析や歩行の自立度判定は,評価者の経験を主軸とした主観的な評価に依存している。バランス機能を評価する指標としてFunctional Reach TestやTimed Up and Go testなどがあるが,その多くは随意的な姿勢制御における動的バランス指標に位置付けられ,オートマチックな姿勢制御における動的バランスを求められる歩行を評価する指標は少ない。そこで本研究では歩行を客観的に評価する指標を検討する目的で3次元加速度センサを使用しZero Cross Point(以下ZCP)と加速度波形の積分値を「運動の変化指標」「運動の量的指標」とし,歩行不安定性の指標になり得るか検討した。

【方法】

対象は若年健常者31名(23.0歳±2.2歳),65歳以上健常高齢者10名(70.6歳±3.6歳)。計測課題は歩行動作とした。計測肢は,事前に評価した閉眼片脚立位保持テストで保持時間の短い側の下肢とした。計測には3次元加速度センサを2セット使用し,胸部(胸骨柄)および骨盤部(両側の下後腸骨棘を結ぶ線の中点)に,センサの計測軸のY軸が垂直になるように貼付した。歩行周期の同定のため,足底に圧力スイッチを貼付した。それぞれのセンサを8ch無線モーションレコーダーに接続し,Bluetooth機能でPCに無線接続した。サンプリング周波数は500Hzとした。歩行速度は被験者の快適歩行速度とし,歩行開始後3歩目以降の4歩行周期を対象とした。運動の変化指標としてZCPを用い,4歩行周期中の正側と負側に振れる交流波形が基線と交差するポイント数を算出した。運動の量的指標には加速度波形の積分値を採用した。統計には一元配置分散分析を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

歩行時のZCPは,若年群,高齢群ともに胸部・骨盤部の間に相関は認められなかった。高齢群では,胸部・骨盤部の左右,上下,前後の各軸でZCPは高値を示した。また,若年群,高齢群ともに,骨盤部の上下方向のZCPが高値となった。歩行時の加速度の積分値は,若年群50.7±4.9,高齢群36.2±7.3であり,若年群と高齢群の間には有意な差を認めたが積分値とZCPの間に相関は認めなかった。胸部と骨盤部では骨盤部の値が大きく,軸別では各群共通してX軸(左右)>Z軸(前後)>Y軸(上下)となった。

【結論】

今回,3次元加速度センサから得られるZCPと積分値の2つのパラメータが,歩行の不安定性指標となり得るか検討した。運動の変化指標としてZCPを求め,「運動の滑らかさ」の指標とした。結果より,胸部・骨盤部の各軸方向間の相関性を見出すことはできなかった。このことは2群間の歩行速度の違いの影響があったと考えた。運動の量的指標として求めた積分値では,加齢に伴い重心の移動範囲は狭まり,特に股関節での左右移動量が減少する傾向となった。股関節の内外転運動はステッピングや方向転換時に重要な機能になり,この要素の評価は転倒予防の指標となり得る可能性があると示唆された。