第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)07

2016年5月27日(金) 17:10 〜 18:10 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:吉田宏史(松山赤十字病院)

[O-MT-07-1] 人工膝関節全置換術(TKA)術前・術後の等尺性筋力の経時的変化について

戸塚裕亮1, 坂本篤則1, 田村暁大1, 外崎一哉1, 上林和磨1, 刀根章浩1, 赤坂清和2, 山本邦彦3 (1.赤心堂病院リハビリテーション科, 2.埼玉医科大学保険医療学部理学療法学科, 3.赤心堂病院整形外科)

キーワード:等尺性筋力, 股関節外転, 膝関節伸展

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(膝OA)にて膝関節内反変形を伴う症例では,股関節外転筋が低下している一方で内転筋力が強い傾向にあり,前額面上の安定性に寄与していると考えられている。しかし,膝関節筋力の経時的変化の報告はあるがTKA前後での股関節内外転筋力の経時的変化の報告は少ない。そこで膝OAによるTKA症例に対し,術前後の術側股関節内外転筋力とTKA術後の膝関節伸展筋力が歩行獲得に及ぼす影響を後方視的に調査したので報告する。

【方法】

対象は2010年11月~2013年12月に膝OAに対しTKAが行われ,併存疾患にて評価困難な例を除外した59例(男9例,女50例,年齢72.66±6.90歳)とした。手術は全例Medial Parapatellar Approachで行われた。Exは術翌日よりベッド上で再開し,疼痛に合わせてROMex,筋力強化,基本動作・歩行exを実施した。また,3~4週で退院となるクリティカルパスを使用し,55例は自宅退院し,4例は病院転院であった。筋力測定はH H Dを用い術側股内外転,術側膝伸展を測定し,トルク体重比を算出(Nm/kg)した。測定時期は術前,術後1,2,3,4週,術後3ヶ月に測定し,術前59例,1週58例,2週56例,3週45例,4週24例,3ヶ月18例であった。統計解析は術側股内外転,術側膝伸展トルク体重比を一元配置分散分析,下位検定はDunnett検定による術前との多重比較を行い,有意水準は5%とした。

【結果】

術側股内転トルク体重比は術前と各測定時期に有意差を認めなかった。術側股外転トルク体重比は術前0.50±0.24Nm/kg,術後1週0.39±0.16Nm/kg,術後3ヶ月0.66±0.18Nm/kgであった。術後1週と術前,術後3ヶ月と術前に有意差を認めた。術側膝伸展トルク体重比は術前0.75±0.27Nm/kg,術後1週0.36±0.18Nm/kg,術後2週0.52±0.27Nm/kg,術後3週0.63±0.27Nm/kg,術後4週0.60±0.19Nm/kg,術後3ヶ月0.78±0.19Nm/kgであった。術後1,2,3,4週と術前に有意差を認めた。

【結論】

術前の術側股内外転トルク体重比の結果,変形性膝関節症(膝OA)にて内反変形を伴う症例では股関節内転筋力が強い傾向は認めなかった。術側股外転トルク体重比は術後1週が有意に低下を認めたがその後,徐々に増加し,術後3ヶ月には有意に改善がみられた。術側股内転トルク体重比も同様に術後1週ではやや低下し,術後3ヶ月に向けて改善傾向がみられた。術前は膝OA進行と共に下肢の廃用性筋力低下を認め,術後,疼痛改善等により活動性が向上し,術後3ヶ月では術前より股内外転トルク体重比の改善を認めたと考えた。術側膝伸展トルク体重比は術後1~4週に有意に低下を認めたが術後3,4週に術前の8割程度の回復がみられた。当院クリティカルパスは3~4週の退院予定であり,退院時期では術前の筋力よりやや低下している状態であることが判明した。また,術後3ヶ月では術前と同程度まで改善するが術後3ヶ月までに脱落症例も多く,術後最低3ヶ月は外来Ex継続が必要であると考えられた。