第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本運動器理学療法学会 一般演題口述
(運動器)19

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第4会場 (札幌コンベンションセンター 1階 107+108)

座長:森口晃一(恩賜財団 済生会八幡総合病院 診療技術部リハビリテーション技術科)

[O-MT-19-4] 人工膝関節全置換術適用患者における入院期間に影響を及ぼす因子の検討

天野徹哉1,2, 玉利光太郎3, 森川真也4, 内田茂博5, 河村顕治2 (1.常葉大学, 2.吉備国際大学大学院保健科学研究科, 3.国際協力機構グアテマラ事務所, 4.放射線第一病院, 5.広島国際大学)

キーワード:最小侵襲手術, 変形性膝関節症, 術後経過

【はじめに】

最小侵襲手術(MIS)法は従来法と比較して出血量や合併症が少なく,手術時間も短いため,術後早期の機能回復が得られ,入院期間の短縮に繋がるとされている。しかし,先行研究では入院期間に影響を及ぼす術後機能の変化については検討されていない。本研究では,MIS法による人工膝関節全置換術(TKA)適用患者の入院期間に影響を及ぼす因子について検討することを目的とした。


【方法】

本研究は,術後21日以内に退院目標を設定しているクリティカルパスを使用している4施設の協力を得て実施した。対象は内側型変形性膝関節症と診断され,2013年7月~2015年7月の間にMIS法による初回TKAの適用となった86名(男性15名,女性71名,年齢74.6±7.1歳)とした。研究デザインは前向きコホート研究で,ベースライン調査(術前)として基本属性である性別,年齢,BMI,運動歴,医学的属性であるKL分類,障害側(片側性・両側性),FIM,身体機能である術側・非術側筋力(膝伸展筋力・膝屈曲筋力),術側・非術側関節可動域(膝伸展ROM・膝屈曲ROM・股伸展ROM),疼痛(NRS),運動機能であるTUGの調査・測定を行った。さらに,追跡調査として術後14日目に身体機能と運動機能の測定を行った。入院期間に影響を及ぼす因子を検討するために,術後入院日数をアウトカムとした重回帰分析を行った。重回帰分析では,術前と術後14日目の身体機能・運動機能の変化量を説明変数としてステップワイズ法により変数選択を行い,基本属性と医学的属性を交絡因子として強制投入して調整を行った。なお,身体機能・運動機能の変化量に関しては,術前機能より術後14日目の機能が改善している場合をプラス,術前機能より術後14日目の機能が劣っている場合をマイナスとなるように算出し,KL分類はGrade4を「1」,Grade3を「0」とした。統計ソフトはSPSS Statistics 22を使用し,有意水準は両側5%とした。


【結果】

重回帰分析の結果(p=0.012,R2=0.32),入院期間に影響を及ぼす因子として,TUG変化量(p=0.012,β=-0.32)と術側膝伸展ROM変化量(p=0.040,β=-0.26)が抽出された。また,交絡因子ではBMI(p=0.008,β=0.39)とKL分類(p=0.012,β=0.34)に有意性が認められた。なお,本研究対象者のTUG変化量の平均は-2.6±5.7秒であり,術側膝伸展ROM変化量の平均は1.5±7.5度であった。


【結論】

TUG変化量と術側膝伸展ROM変化量は,交絡因子の影響からも独立して入院期間に影響を及ぼすことが示唆された。すなわち,術後入院日数が延長する症例は,術前から術後14日目までのTUGと術側膝伸展ROMの改善が有意に低いことが示された。本研究は,MIS法によるTKA適用患者の入院期間に影響を及ぼす術後機能の変化を明らかにすることができたため,入院期間短縮に対する理学療法を検討するうえでの一助になると考える。