[O-MT-20-2] 人工股関節全置換術患者における術後3ヶ月の患者立脚型アウトカムを予測する術前因子の検討
Classification and regression trees法による解析
キーワード:人工股関節全置換術, 患者立脚型アウトカム, 予測分析
【はじめに,目的】
人工股関節全置換術(THA)患者の術後成績は良好であると報告される一方で,術後のアウトカムが不良な者の存在も報告されている。近年,術前因子から術後アウトカムを予測する多変量解析を用いた研究が多く散見される。この多変量解析の解析方法のひとつにClassification and regression trees(CART)法というものがある。CART法とは,ある集団をアウトカムに影響が強い因子から段階的に2分割させ,2進木成長アルゴリズムを作成し,分類および予測を行う統計手法である。この方法は,分岐時の閾値が明記され視覚的に理解しやすい特徴を有している。そこで今回の目的は,CART法を用いて術前因子からTHA術後3ヶ月の疾患特異的ADL能力を分類および予測し,治療を展開する上での一助にすることである。
【方法】
対象は,変形性股関節症,大腿骨頭壊死症,または慢性関節リウマチと診断され,当院にて初回片側THAを施行された者とした。除外基準は,両側例,術後重篤な合併症を呈した者,重篤な心疾患,中枢神経疾患,股関節以外の骨・関節の手術既往を有する者,認知障害を有する者とした。測定項目は,従属変数を術後3ヶ月WOMAC身体項目(WOMAC_F),独立変数を年齢,BMI,術前の股関節可動域(屈曲・外転・外旋),最大等尺性股関節外転筋トルク(外転筋トルク),X線学的脚長差(脚長差),WOMAC疼痛項目,WOMAC_Fとし,後方視的に調査した。統計解析は,相関分析を用い従属変数と相関のある独立変数を抽出した後(有意水準5%),相関があった独立変数を用いてCART法による解析を行った。また,Kruskal-Wallis検定および多重比較検定(Steel-Dwass)を用いて,CART法で最終的に分類および予測された各群の術後3ヵ月WOMAC_Fを比較し,分類の妥当性を検証した(有意水準5%)。
【結果】
対象は130名(男性24名,女性106名,平均年齢±標準偏差64.2±9.9歳)であった。相関分析の結果,外転筋トルク,脚長差,術前WOMAC_Fの関連が示された。その後のCART分析の結果,第1層で脚長差9.4mmを境に2群に分類され,脚長差が9.4mm以上の群は第2層で術前WOMAC_F61.0点を境に2群に分類(61.0点未満:A群,61.0点以上:B群)され,術後3ヶ月WOMAC_F(人数,平均値±標準偏差)は,A群24名,81.7±11.6点,B群22名,88.9±7.9点であった。脚長差が9.4mm未満の群は第2層で外転筋トルク0.27Nm/kgを境に2群に分類(0.27Nm/kg未満:C群,0.27Nm/kg以上:D群)され,術後3ヶ月WOMAC_Fは,C群38名,93.0±6.0点,D群46名,96.2±4.0点であった。分類の妥当性を検証した結果,全ての群間において有意差が認められた。
【結論】
今回,第一に脚長差を確認した後,第二に術前WOMAC_Fや外転筋トルクを確認することで,術後3ヶ月WOMAC_Fを分類および予測できる可能性が示された。この情報は,術後の治療を展開する上で有益なものになると考える。
人工股関節全置換術(THA)患者の術後成績は良好であると報告される一方で,術後のアウトカムが不良な者の存在も報告されている。近年,術前因子から術後アウトカムを予測する多変量解析を用いた研究が多く散見される。この多変量解析の解析方法のひとつにClassification and regression trees(CART)法というものがある。CART法とは,ある集団をアウトカムに影響が強い因子から段階的に2分割させ,2進木成長アルゴリズムを作成し,分類および予測を行う統計手法である。この方法は,分岐時の閾値が明記され視覚的に理解しやすい特徴を有している。そこで今回の目的は,CART法を用いて術前因子からTHA術後3ヶ月の疾患特異的ADL能力を分類および予測し,治療を展開する上での一助にすることである。
【方法】
対象は,変形性股関節症,大腿骨頭壊死症,または慢性関節リウマチと診断され,当院にて初回片側THAを施行された者とした。除外基準は,両側例,術後重篤な合併症を呈した者,重篤な心疾患,中枢神経疾患,股関節以外の骨・関節の手術既往を有する者,認知障害を有する者とした。測定項目は,従属変数を術後3ヶ月WOMAC身体項目(WOMAC_F),独立変数を年齢,BMI,術前の股関節可動域(屈曲・外転・外旋),最大等尺性股関節外転筋トルク(外転筋トルク),X線学的脚長差(脚長差),WOMAC疼痛項目,WOMAC_Fとし,後方視的に調査した。統計解析は,相関分析を用い従属変数と相関のある独立変数を抽出した後(有意水準5%),相関があった独立変数を用いてCART法による解析を行った。また,Kruskal-Wallis検定および多重比較検定(Steel-Dwass)を用いて,CART法で最終的に分類および予測された各群の術後3ヵ月WOMAC_Fを比較し,分類の妥当性を検証した(有意水準5%)。
【結果】
対象は130名(男性24名,女性106名,平均年齢±標準偏差64.2±9.9歳)であった。相関分析の結果,外転筋トルク,脚長差,術前WOMAC_Fの関連が示された。その後のCART分析の結果,第1層で脚長差9.4mmを境に2群に分類され,脚長差が9.4mm以上の群は第2層で術前WOMAC_F61.0点を境に2群に分類(61.0点未満:A群,61.0点以上:B群)され,術後3ヶ月WOMAC_F(人数,平均値±標準偏差)は,A群24名,81.7±11.6点,B群22名,88.9±7.9点であった。脚長差が9.4mm未満の群は第2層で外転筋トルク0.27Nm/kgを境に2群に分類(0.27Nm/kg未満:C群,0.27Nm/kg以上:D群)され,術後3ヶ月WOMAC_Fは,C群38名,93.0±6.0点,D群46名,96.2±4.0点であった。分類の妥当性を検証した結果,全ての群間において有意差が認められた。
【結論】
今回,第一に脚長差を確認した後,第二に術前WOMAC_Fや外転筋トルクを確認することで,術後3ヶ月WOMAC_Fを分類および予測できる可能性が示された。この情報は,術後の治療を展開する上で有益なものになると考える。