第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)01

2016年5月27日(金) 10:00 〜 11:00 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:吉田昌平(京都学際研究所附属病院 リハビリテーション科)

[O-SP-01-3] Star Excursion Balance Testを用いた膝前十字靭帯再建者の動的バランス能力の検討

術前と術後の回復状況

井上拓海, 関大輔, 大見頼一, 尹成祚, 長妻香織, 川島達宏, 金子雅志, 栗原智久, 吉本真純, 國田泰弘, 井上瑞穂, 川島敏生 (日本鋼管病院)

キーワード:膝前十字靭帯損傷, 動的バランス, 経時的変化

【はじめに,目的】

動的バランス能力の定量的な評価としてStar Excursion Balance Test(以下:SEBT)の有用性が認められているが,SEBTによる膝前十字靭帯(以下:ACL)損傷者の術後経過に関する報告は散見される程度であり,その把握を目的とし検討した。

【方法】

対象は女子競技レベルのACL損傷者とし,ACL再建術前31名(17.7±2.0歳),術後3ヶ月15名(18.5±2.5歳),術後5ヶ月11名(18.2±2.4歳)とした。SEBTは先行研究にてACL損傷との関連の認められた2方向(支持脚に対して内側90°,外側90°)で実施した。各方向3回の平均値を棘下長で標準化し,術前,術後3ヶ月,5ヶ月における健側と患側の比較を行った。統計学的解析はSPSSを用いT検定,Mann-Whitneyの検定を行い,有意水準は5%未満とした。我々のプロトコールは通常のリハビリテーションに加え,一次予防で有効であった股関節周囲筋の筋力強化,バランス訓練等のプログラムを導入している。

【結果】

術前内側(患側:87.3±7.8%,健側:92.3±6.6%,P<0.01),術後3ヶ月内側(患側:90.3±5.2%,健側:95.8±6.8%,P<0.05)において有意差を認めた。術後5ヶ月内側(患側:91.4±4.8%,健側:92.9±4.9%)には有意差を認めなかった。外側は全ての時期において有意差を認めなかった。

【結論】

本研究結果より術後5ヶ月で動的バランスの健患差は消失した。一方で,DelahuntらはSEBTを用いた評価によりACL再建者のスポーツ復帰時においても,動的バランス能力の低下は健常者と比べ低下していると報告しており,本研究の結果がスポーツ復帰に十分なバランス能力かは定かではない。その為,今後は健常者との比較を検討することにより必要となる動的バランス能力を明らかにしていくことが課題である。一方で,本研究によりACL損傷後の動的バランス能力の低下及び改善過程が明らかとなり,今後スポーツ復帰を安全にするための指標つくりの一助となりえることが示唆された。