第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)02

2016年5月27日(金) 11:10 〜 12:10 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:相澤純也(東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター)

[O-SP-02-6] 中高生サッカー選手の柔軟性・筋力の年代別比較

宮田徹1, 嶋田綾1, 鈴木伸之1, 河端将司1, 佐藤陽介1, 太附広明1, 草場洋平2, 柏崎裕一2 (1.相模原協同病院医療技術部リハビリテーション室, 2.相模原協同病院整形外科)

キーワード:中高生サッカー選手, 身体機能, 年代別比較

【はじめに,目的】

中高生サッカー選手には成長期特有のスポーツ傷害が多く,成長の個人差と身体機能の特徴を考慮する必要がある。過去の報告では,小・中・高校生という3つの枠組みで年代が上がると柔軟性が低下したという報告がある(森内ら,2004)が,成長の著しい中学生を1つの枠組みとして捉えているため,中学生における身体機能変化の詳細が不明確である。そこで本研究では,学年ごとにカテゴリー分けされた中高校生のサッカー選手を対象とし,年代が上がるごとに変化する身体機能の抽出を目的とした。


【方法】

対象はプロサッカーチーム下部組織に所属する男子中高生サッカー選手165名で,内訳は中学1年生(U13)が47名(身長154±9cm,体重43±8kg),中学2年生(U14)が44名(160±8cm,47±7kg),中学3年生(U15)が45名(167±6cm,54±8kg),高校生(U18)が29名(172±5cm,62±5kg)であった。

測定項目は,柔軟性の指標として,下腿前傾角(°),膝窩角(°),自動踵臀間距離(HBD:cm),股関節開排角度(°),腹臥位股関節内旋・外旋角度(°)を,筋力の指標として,中殿筋と大殿筋の徒手筋力検査,0-40cm台からの片脚立ち上がり(cm)をそれぞれ測定した。

統計処理に関して,年代と柔軟性・筋力の相関をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。年代との相関が±0.2以上であった項目に関して,柔軟性では一元配置分散分析,筋力ではKruskal-Wallis検定を行った。なお5%水準で有意性があった場合,各年代間の差を明らかにするためにBonferroni法,Steel-Dwass法を用いた多重比較をそれぞれ行い,その有意水準は5%未満とした。


【結果】

年代と相関があった項目は,柔軟性では右下腿前傾角(r=-0.31),左下腿前傾角(r=-0.24),左膝窩角(r<0.22),右HBD(r=0.39),左HBD(r=0.49)であり,筋力では右中殿筋(r=0.29),左中殿筋(r=0.26)であった(それぞれp<0.01)。他の項目では年代との有意性がない,もしくは非常に弱い相関であった。

相関があった項目に対する一元配置分散分析ならびにKruskal-Wallis検定では,F値・カイ二乗値は全ての項目で有意であった(p<0.05)。多重比較の結果,右下腿前傾角(U13-U15,U13-U18),左下腿前傾角(U13-U15),左膝窩角(U14-U18),右HBD(U13-U15,U13-U18,U14-U18,U15-U18),左HBD(U13-U14,U13-U15,U13-U18,U14-U18),右中殿筋(U13-U15,U13-U18),左中殿筋(U13-U15,U13-U18)でそれぞれに有意差があった(p<0.05)。


【結論】

柔軟性に関して,下腿前傾角やHBDは年代が上がるごとに柔軟性が低下していた。筋力では,U13はU15やU18に比較して中殿筋の筋力が低値であった。つまり年代が上がるに連れ柔軟性は低値となり,筋力は高値となることが示唆された。特にU13とU15・U18は年代間で身体機能特性が異なり,それぞれの年代別に対応する必要があると考えられた。