第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)04

2016年5月28日(土) 11:10 〜 12:10 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:長野雅江(帝塚山リハビリテーション病院 リハビリテーション部)

[O-TK-04-6] 5年間継続してリハビリテーション特化型デイケアを利用した脳卒中者の歩行能力の変化

松永玄1,2, 山口智史3, 宮本沙季1, 鈴木研1, 大高洋平1,3, 近藤国嗣1 (1.東京湾岸リハビリテーション病院, 2.桜美林大学大学院老年学研究科老年学専攻, 3.慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室)

キーワード:通所リハビリテーション, 後方視的研究, 生活期

【はじめに,目的】

脳卒中者は,健常高齢者と比較し,加齢による歩行能力の低下が顕著であることが指摘されている(Wade 1992,山海ら1998)。この歩行能力や身体機能などの低下を予防し改善するために,デイケアが利用されているが,長期間デイケアを利用した脳卒中者の歩行能力の変化について報告した研究は少ない。そこで本研究では,リハビリテーションに特化した当デイケアを利用した脳卒中者について,5年間のデータを後方視的に調査し,年齢による違いから,歩行能力の経時的変化を検討した。

【方法】

対象は,2007年5月から2015年9月の間に当デイケアを利用した681名のうち,以下の基準を満たした74名とした。選択基準は,初発で片側の脳梗塞もしくは脳出血,当デイケアを5年間継続して利用し評価が可能,歩行能力が監視以上,指示理解が良好であった者とした。除外基準は,著明な疼痛や関節拘縮により歩行困難であった者とした。

調査項目は,歩行能力の指標として歩行速度を選択した(Finch 2002)。調査期間は,デイケア利用開始時,利用後1年毎に5年後までとした。歩行速度の評価では,快適な歩行を指示し,歩行距離前後3 mを含む歩行路16 mにおいて,10 mの歩行時間を2回測定した。得られたデータから歩行速度(m/s)を算出し,2回の平均値を代表値とした。

データ解析は,利用開始時の年齢から3群(59歳以下,60-69歳,70歳以上)に分類し,歩行能力の経時的変化を検討した。また,各群において,利用後5年における歩行速度の変化を検討するために,利用後5年における歩行速度の値を利用開始時の歩行速度の値で除した変化率(%)を算出した。

【結果】

59歳以下が24名,60-69歳が27名,70歳以上が23名であった。各群の年齢(平均値±標準偏差)は53±6歳,64±3歳,75±4歳であった。利用開始時の発症後年数(中央値,最小-最大)は0.5年,0.3年-5.9年,0.5年,0.3年-7.2年,0.5年,0.3年-4.0年であった。

歩行速度(m/s)の値を利用開始時,利用後1,2,3,4,5年後の順に,平均値で示す。59歳以下では0.49,0.69,0.71,0.71,0.75,0.73であり,利用後4年まで向上を認めた。60-69歳では0.56,0.66,0.67,0.68,0.66,0.67であり,利用後3年まで向上し,その後は維持していた,70歳以上では0.60,0.71,0.72,0.67,0.64,0.62で,利用後2年まで向上し,2年後をピークに緩やかに低下していた。

利用開始時を基準とした利用後5年における歩行速度の変化率は,59歳以下では20.1%,60-69歳では10.0%,70歳以上では2.2%であり,年齢が若いほど,改善していた。

【結論】

デイケアを5年間継続利用した脳卒中者において,年齢の違いにより,歩行能力の経時的変化が異なっていた。一方で,加齢による歩行能力の低下が顕著と言われる脳卒中者において,リハビリテーションに特化したデイケアを利用することで,歩行速度が向上・維持することが明らかになった。