第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)07

2016年5月28日(土) 14:50 〜 15:50 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:備酒伸彦(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部)

[O-TK-07-2] 高齢者は国際生活機能分類(ICF)の参加に該当する項目の重要度をどのように捉えるか

浅川育世1, 内田智子2, 小貫葉子2, 前沢孝之2 (1.茨城県立医療大学保健医療学部理学療法学科, 2.茨城県立医療大学付属病院理学療法科)

キーワード:ICF, 参加, 介護予防

【はじめに,目的】

2006年の介護保険改正以降,介護予防が重視されるようになり,地域包括ケアシステムの実現に向けて介護予防の推進が施策に盛り込まれた。一方,介護予防について介護予防の提供者が,活動や参加に焦点をあててこなかった等の指摘もある。特に参加は活動のより高次のレベルであり,参加レベルを維持・向上させることは介護予防に重要である。しかし,参加についての概念は難しく個人によって捉え方も異なる。本研究は,介護予防における一次予防の対象者がどのような項目を重要視しているかICFコードに基づき調査した。

【方法】

茨城県が介護予防事業のプロジェクトとして取り組むシルバーリハビリ体操の指導士より500名を無作為抽出し,自記式郵送調査を実施した。調査項目はICF Core Setsの活動と参加の項目より第6章から第9章までの第2レベル36項目から下1桁の数値が8及び9のものを除外し24項目に絞った。24項目については対象者が理解し易いよう注釈を加えた。その際に別に扱うより,1つにまとめた方が理解が容易と判断された2項目については1つに集約し23項目とした。23項目を「今現在の生活において,生きがい,家庭や社会生活での役割を形成するためにどのくらい重要ですか」について「全く重要でない」;0,「あまり重要でない」;1,「やや重要」;2,「とても重要」;3の4件法で質問した。また年齢については別に質問した。各項目について選択肢の回答者数を集計した。前期高齢者と後期高齢者の回答状況の比較にはU testを実施した。

【結果】

368名より返送され,回答に欠損がある,要介護認定を受けている,64歳以下であることを除外基準とし,262名分(52.4%)を有効回答とした。回答者の平均年齢は70.2±4.3歳であり,内訳は前期高齢者が226名(86.3%),後期高齢者は36名(13.7%)であった。なお,回答について「全く重要でない」,「あまり重要でない」を否定的な回答とした場合,回答が半数以上あった項目は,d730【よく知らない人との関係】(回答者の割合;53.1%),d845【仕事の獲得・維持終了】(同;58.4%),d850【報酬を伴う仕事】(同;62.2%),d865【複雑な経済的取引】(同;56.5%),d930【宗教とスピチュアリティ】(同;59.9%)であった。逆に肯定的な回答が多い項目は上位からd710・720【基本的な(複雑な)対人関係】(回答者の割合;96.2%),d760【家族関係】(同;95.4%),d750【非公式な社会関係】(同;94.6%)であった。前期高齢者と後期高齢者の回答の状況は有意差を認めなかった。

【結論】

第8章主要な生活領域,特に仕事と雇用(d840-d859)に否定的な回答が多く見られた。回答者の多くが,すでに定年退職を迎える年齢以上の者であることに起因するものと思われる。一方,第7章対人関係については肯定的な回答の割合も高く,他者との関係を構築し維持することは生きがい形成につながる重要な参加であることが伺える。