第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本予防理学療法学会 一般演題口述
(予防)07

2016年5月27日(金) 17:10 〜 18:10 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:廣滋恵一(九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部)

[O-YB-07-2] 痛みを有する高齢者に対するセルフモニタリングにより行動変容を促進する介護予防プログラムの効果検証

ランダム化比較試験

平瀬達哉1,2, 井口茂1,2, 中野治郎1, 沖田実3 (1.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学療法学分野, 2.長崎大学医学部保健学科保健学実践教育研究センター, 3.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻運動障害リハビリテーション学分野)

キーワード:痛み, 介護予防, 行動変容

【目的】

痛みは運動機能や心理面ならびに身体活動量と密接に関連するため,高齢者の痛み対策は重要な課題である。一方,介護予防事業では痛みを有する高齢者に対する効果的なプログラムは明らかとなっていない。先行研究では,痛みに対する有効な介入手段として運動介入と行動変容の促進が推奨されており,これを参考に我々は運動介入に加えてセルフモニタリングにより行動変容を促進する介護予防プログラムの開発を進めている。本研究の目的は痛みを有する高齢者を対象に,痛み・運動機能・心理面・身体活動量に対する本プログラムの効果をランダム化比較試験で検証することである。

【方法】

対象は介護予防事業に参加した痛みを有する65歳以上の高齢者67名(平均年齢78.0歳)であり,運動介入を実施する群(対照群)36名とそれに加えてセルフモニタリングにより行動変容を促進する群(介入群)31名の2群に封筒法を用いてランダムに振り分けた。介入期間は12週間であり,両群ともに筋力・バランストレーニングから構成した60分間の運動プログラムを週1回実施した。そして,介入群には万歩計を配布し日々の歩数や痛みの程度ならびに行動を記録するセルフモニタリングを行い,行動変容の促進を図った。具体的には,事業に従事している理学療法士が痛みの適応行動に着目するフィードバックと,歩数を介入後4週毎に初期評価時より10%増加することを目標とする指導を週1回行った。評価項目は,痛み・運動機能・心理面・身体活動量とし,痛みは部位数と最も痛みが顕著であった部位のNRSを聴取した。運動機能は椅子起立時間とTUGを測定し,心理面はうつ症状(GDS-15)と痛みの破局的思考(PCS)を評価した。身体活動量は加速度計Lifecorder(スズケン)を用いて,介入前後1週間の平均歩数と,1-3,4-6,7-9Metsの各運動強度別平均活動時間を算出した。分析は,運動機能と身体活動量は2要因分散分析,痛みと心理面はMann-Whitney検定ならびにWilcoxon符号順位検定を用いて介入前後で比較した。

【結果】

介入前の対象者属性と評価項目全てで2群間に有意差を認めなかった(p>0.21)。介入中の中止例は介入群0名,対照群2名,出席率はそれぞれ90.8%,89.0%であり,脱落率と出席率に有意差を認めなかった(p=0.49,p=0.54)。痛みと運動機能は2群ともに介入前後で有意に改善していた。心理面のGDS-15は介入群が対照群に比べ介入後で有意に改善しており,PCS総得点とその下位尺度である無力感の得点も介入群で有意に改善していた。身体活動量は歩数と4-6Mets活動時間で交互作用を認め,介入群が対照群に比べ有意に改善していた。

【結論】

運動介入に加えてセルフモニタリングにより行動変容を促進する介護予防プログラムは,運動介入のみを実施するプログラムと比較して,痛みの捉え方などが反映する認知的側面の改善に有効であり,その結果,身体活動量が向上し,うつ症状の改善につながったと推察される。