第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本理学療法教育学会 一般演題ポスター
教育P08

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第10会場 (産業振興センター 2階 セミナールームB)

[P-ED-08-2] 書式の変更による当院リハビリテーション課のインシデント・アクシデントレポートの変化について

植田明子1, 阿部和樹1, 高橋光一1, 畑中亜美1, 斉藤美紀男2, 三上淳一3, 中谷玲二3 (1.洞爺温泉病院リハビリテーション課, 2.洞爺温泉病院総務課, 3.洞爺温泉病院内科)

キーワード:医療安全, インシデント, 書式

【はじめに,目的】

当院のインシデント・アクシデントレポート(以下レポート)については,2013年10月までは,出来事の領域分類は部署ごとに違い,発生状況,原因,防止策等の具体的内容を自由記載する書式を使用していた。しかしこのレポートは,報告までに時間を要したりで分析や統計を行いにくいといった事があり,2013年11月からは,速報として出来事とその要因について該当項目をチェックし,必要に応じ自由記載を行う院内共通の書式を採用している。今回,リハビリテーション課におけるレポート数や内容について書式の変更によりどのような変化が見られたか,書式が変更された前後の報告について比較検討する。



【方法】

調査対象は,2011年11月~2015年10月まで当院リハビリテーション課の入院,外来リハビリテーション及び通所リハビリテーションに従事する,PT,OT,ST,助手(以下職員)から提出されたレポートで,旧書式報告期間の課の職員数は19.3名,新書式報告期間は20.5名である。調査対象について,2011年11月~2013年10月までに旧書式で提出されたレポート(以下旧レポート)と,2013年11月~2015年10月までに新書式で提出されたレポート(以下新レポート)の2群に分けた上で,両群の全レポート数,内容,レベルについて記述統計・推測統計により比較した。



【結果】

旧レポート数は12件であり,職員一人当たりの報告は0.6件だった。内容は転倒・転落6件,機器の設定ミス2件,熱傷2件,医療事故以外1件であり,レベル別ではレベル0が1件,1が7件,2が3件,その他が1件であった。新レポートは36件であり,職員一人当たりの報告は1.8件だった。内容は転倒・転落12件,チューブ類の抜去7件,機器の設定ミス2件,熱傷2件,医療事故以外13件であり,レベル別では,レベル0が2件,1が10件,2が11件,3aが2件,その他が11件であった。推測統計を用いて両群を比較したところ,新レポートの方が全レポート数,職員一人当たりの報告数いずれも有意に多かった(それぞれp<0.01,p<0.05,2項検定およびカイ2乗検定による)。主な内容である転倒・転落の報告比率や,レベル別の報告比率に有意な変化はなかった(p>0.05,カイ2乗検定,フィッシャーの直接確率法による)。



【結論】

新レポートになり報告数が有意に増加した一方,主な報告内容やレベル別の比率には有意な変化はなかった。単純比較はできないものの書式による報告のしやすさがレポート数を増やす結果に繋がった可能性があると考える。遭遇した出来事が医療事故につながる可能性があることを意識しレポートを提出することは重要であり,今後も増えたレポート数を活用し要因の分析を重ね医療事故防止に努めていきたい。