第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P02

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-02-2] 保存期慢性腎臓病(CKD)患者の身体機能と運動耐容能

運動療法の継続による効果

末松直子, 上村幸子 (九州労災病院門司メディカルセンター中央リハビリテーション部)

キーワード:慢性腎臓病, 身体機能, 運動療法継続

【はじめに,目的】

我が国の透析患者数は年々増加しており,CKDは末期腎不全への強力な危険因子である。CKDの進行を防ぎ,透析導入を遅らせる有効な対策をとることが急務である。これまでCKD患者は腎機能障害や腎病変が増悪する危険があるとの理由で,運動が制限されるケースが多かったが,近年「制限」から「推奨」へ大きなパラダイムシフトを迎えている。CKD患者の身体機能や運動耐容能低下に関する報告は増えつつあるが,運動療法を継続したケースに関する報告は少ない。そこで本研究の目的は,運動療法を継続している保存期CKD患者の身体機能・運動耐容能を調査し,運動療法継続の効果を検討することとした。

【方法】

対象は当院心臓リハビリテーション(心リハ)に外来通院している患者58例。維持透析患者,歩行に支障をきたす運動障害のある患者は除外した。診療記録より患者基本情報,血液生化学データー,心機能指標を後方視的に調査した。身体機能は握力,膝伸展筋力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS30),Time up & Go Test(TUG),片脚立位時間,6分間歩行距離(6MD),10m最大歩行時間を測定した。心肺運動負荷試験(CPX)より最高酸素摂取量(Peak VO2),無酸素性代謝閾値(AT),二酸化炭素換気当量(VE/VCO2 slope)を測定した。推定糸球体濾過量(e-GFR)と各項目との関連をSpearmanの順位相関係数を用いて検討し単回帰分析を行なった。さらに対象者をe-GFR≧60(ml/min/1.73m2)のnon CKD群とe-GFR<60のCKD群に分け,各項目を対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定,Fisherの正確率検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

CKD群の重症度分類はステージG3aが22名,G3bは10名,G4は6名であった。e-GFRと各項目との相関は認められず,単回帰分析にてVE/VCO2 slopeのみ有意な相関を認めた(r=-0.300;P=0.05)。non CKD群38名(男性/女性=18/20,70.2±13.6歳)vs CKD群20名(=12/8,76.0±8.6歳)に分類され,性別,年齢,患者基本情報,血液生化学データー,心機能指標に有意差は認められなかった。身体機能や運動耐容能指標の比較でも,CKD群で低下傾向はあるものの有意差は認められなかった,握力(26.7±10.1 vs 21.6±6.9kg),膝伸展筋力体重比(0.34±0.18 vs 0.29±0.09),CS30(13.0±3.7 vs 15.0±4.9回),TUG(7.1±2.3 vs 8.1±2.9秒),片脚立位時間(22.2±22.6 vs 20.4±20.9秒),6MD(409.4±108.2 vs 397.0±77.2m),10m最大歩行時間(6.8±1.8 vs 7.0±2.3秒),Peak VO2(15.7±5.3 vs 12.8±2.8ml/kg/min),AT(11.8±3.1 vs 11.5±6.7ml/kg/min),VE/VCO2 slope(32.7±5.9 vs 36.7±8.0)。

【結論】

運動療法の継続により保存期CKD患者の身体機能や運動耐容能の低下を予防しうる可能性が示唆された。本研究では腎機能指標の推移を検討できていないため,今後の課題としたい。また診療報酬上,心リハ患者を対象とせざるえないことが研究の限界として挙げられる。