第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本心血管理学療法学会 一般演題ポスター
心血管P05

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-HT-05-4] 植込型左室補助人工心臓装着後,脳梗塞を発症し高次脳機能障害を呈した症例

運動処方としての高強度インターバルトレーニングの検討

舘野純子1, 坂英里子1, 宮村大治郎1, 門手和義1, 宇賀田裕介2, 池田奈保子2, 永井勝信1 (1.自治医科大学附属さいたま医療センターリハビリテーション部, 2.自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科)

キーワード:心臓リハビリテーション, 植込型左室補助人工心臓, 高次脳機能障害

【目的】左室補助人工心臓(以下LVAD:left ventricular assist device)は,重症心不全の治療手段として使用されるようになり,重症心不全患者の生命予後は著しく改善している。しかし,長期にわたるデコンディショニングを呈している症例が多いことや,血栓症等の合併症のリスクが報告されているため,リハビリテーションは多角的に介入する必要がある。今回,植込型LVAD装着患者の手術前後に理学療法を実施した。術後に脳梗塞を発症し高次脳機能障害を呈するも,病態に応じたプログラムを立案することにより,社会復帰が可能となったため報告する。

【症例提示】61歳男性。診断名は拡張型心筋症,慢性心不全。入院前ADLは自立,自営業管理職に就労。NYHA IV,EF 15.6%,LVDd/Ds 63.1/58.6mm,BNP 3085.7pg/ml。

【経過】拡張型心筋症に対して3年間の治療歴があり,心不全増悪による入退院を繰り返していたため精査・加療目的に当院入院となった。薬物療法や補助換気療法等で心不全加療が開始され,入院後第22病日に心臓リハビリテーションを開始した。その間,カテコラミン製剤投与にも関わらず,多臓器不全が進行しており,保存的加療の継続困難と判断されてLVAD装着の方針となった。第90病日,植込型LVAD(Heart Mate II)装着術が施行された。術後第5日目に理学療法にて離床を開始し,1週間後に心臓リハビリテーションを再開したが,術後第16日目に脳梗塞を発症し右同名半盲・失語・失行・注意障害等が出現した。作業療法士・言語療法士と共に高次脳機能障害に対して介入し,術後第40日目に行き先の口頭指示のみで院内歩行が可能となったため心臓リハビリテーションを再開した。術後第60日目に行ったCPXではPeak VO2が13.1ml/kg/minであり,ATレベルでの持久性運動が下肢疲労によって継続出来ていなかったため,高強度相1分間と低強度相2分間を繰り返す高強度インターバルトレーニングを導入した。その結果,術後第102日目に行ったCPXではPeak VO2が17.3ml/kg/minへ向上した。その間,週に1回の多職種合同カンファレンスにて方針を確認しつつ,退院前に家屋調査を実施し,術後第114日目に自宅退院となった。その後,外来にて心臓リハビリテーションを継続し,退院1ヶ月後に現職復帰を果たした。

【考察】Heart Mate II装着患者の脳卒中発症率は8%との報告がある。しかし,LVADの機器管理が困難な状況は自宅退院における大きな阻害因子である。そのため,本症例において,手続き記憶をもとにした指示を用いて歩行動作の反復練習を実施し,LVADの機器管理を含めた安全な院内歩行が可能となったことは,心臓リハビリテーションを再開する上で重要であったと考える。さらに,LVAD装着患者に対する,適切な運動処方は重要であり,高強度インターバルトレーニングの導入は運動耐容能を向上させると考えられる。