第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P11

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-11-5] 腸腰筋における表面筋電図法の股関節角度適用範囲の検討

治郎丸卓三1, 藤谷亮1, 小嶋高広2, 和智道生2, 金沢伸彦2,3 (1.滋賀医療技術専門学校, 2.金沢整形外科クリニック, 3.藍野大学)

キーワード:腸腰筋, 表面筋電図, MRI

【はじめに,目的】

我々は,困難であるとされた腸腰筋における表面筋電図の記録法の実現可能性を検証し,腸腰筋の皮下表出領域を確認するとともに,隣接筋である縫工筋からの筋電図信号の混入(crosstalk)の影響を評価して,腸腰筋からの表面筋電図信号が記録可能であることを確認した(Jiroumaru, et al., 2014)。しかし,股関節屈曲角度が変化した際の影響については検討していない。そこで本研究では,股関節屈曲角度が変化した際の腸腰筋の皮下表出領域を確認するとともに,隣接筋からのcrosstalkの影響なく腸腰筋の表面筋電図を記録できるかを検討し,どの股関節屈曲可動範囲まで腸腰筋の表面筋電図を記録することが可能かを確認した。

【方法】

対象は10名の健常成人男性が研究に参加した。そのうちの6名はMRI測定を行った。異なる4つの股関節屈曲角度(-10°,0°,30°,60°)での最大随意等尺性股関節屈曲運動中の股関節屈筋群(腸腰筋,縫工筋,大腿直筋,大腿筋膜張筋)の表面筋電図を記録し,腸腰筋の表面筋電図にcrosstalkの影響が無いかを確認するために,各筋の筋電図信号内における相互相関解析を行った。その後,MRIを用いて,異なる4つの股関節屈曲角度での腸腰筋の皮下表出領域が表面筋電図を記録できる程度に十分に大きいかを検討した。相互相関解析は,各筋からのcrosstalkの相関に基づく指標として算出した。Winter, et al.,(1994)は,共通の筋電図信号がない相互相関の値は約0.2であることを報告しており,その0.2の値を基準とした。また,腸腰筋の皮下表出領域,腸腰筋の皮下表出領域面積,皮膚表面から腸腰筋までの深さは,一元配置分散分析(股関節屈曲角度)を用いて比較した。股関節屈曲角度間の有意な主効果が得られた場合,事後検定としてDunnet testを用いて,股関節角度60°と各股関節屈曲角度の値をそれぞれ比較し,有意水準は5%とした。

【結果】

腸腰筋,縫工筋,大腿直筋,大腿筋膜張筋間の-10°から60°の範囲における相互相関値は,全ての値において0.3未満であった。腸腰筋電極位置での腸腰筋の皮下表出領域は,全ての股関節屈曲角度の場合で10 mm以上であった。60°と比べて他の股関節屈曲角度で腸腰筋の皮下表出領域の有意差を認めた(全て;p<0.05)。さらに,腸腰筋の皮下表出領域面積は60°と比べて他の股関節屈曲角度で有意差を認めた(全て;p<0.05)。皮膚表面から腸腰筋までの深さは,-10°~0°では10 mm以下であり,30°では11.4±4.5 mmであったが,背臥位の0°の値は,側臥位の0°の値よりも約3mm小さかった。60°と比べて他の股関節屈曲角度で,皮膚表面から腸腰筋までの深さに有意差が認められた(全て,p<0.05)。

【結論】

腸腰筋の表面筋電図において,股関節屈曲角度-10°から30°の範囲において,隣接筋である他の股関節屈曲筋群からのcrosstalkの影響を無視できる程度であることを確認した。