第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P16

Sat. May 28, 2016 11:40 AM - 12:40 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-16-3] 経皮的電気神経刺激が対側前腕の血流動態,発汗および皮膚温に及ぼす影響

畑賢俊1,2, 高橋尚3, 栃尾健介4, 古我知成3 (1.岡山赤十字病院リハビリテーション科, 2.川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科リハビリテーション学専攻修士課程, 3.川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科, 4.川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科作業療法専攻学部生)

Keywords:経皮的電気神経刺激, 自律神経反応, 近赤外線分光法

【はじめに】

非侵襲的に体表面上から神経に電気刺激を加える治療法である経皮的電気神経刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation:以下,TENS)は物理療法として広く普及している。これまでのTENSの効果を検討した研究において,刺激同側肢や刺激部位近辺の自律神経反応についての報告は散見されるが,刺激反対側肢や刺激から遠隔部位への影響についてはほとんど知られていない。本研究では,一側前腕に対するTENSが,血流動態,発汗および皮膚温にどのような影響をもたらすのか,またそれらに刺激同側と対側でどのような違いがみられるのかを比較検討した。


【方法】

自律神経および循環器疾患などの既往のない健常男性8名(平均年齢20.3±1.2歳)を対象とした。室温は26.0±0.5℃に保ち,安静背臥位にて実施した。血流動態はレーザー組織血液酸素モニターを用い,前腕前面中間部に貼付し測定深度4cmとした。マイクロ発汗計を手掌部に貼付し発汗量と表面温度を測定し,パルスオキシメーターを示指に装着し血中酸素飽和度を測定した。低周波治療器(ES-160)を使用し,利き手前腕前面の肘関節の折り目から,手関節のしわの中間点より両側6.0cmに電極を配置し,TENSを15分間行った。刺激はconstantモード,持続時間200μsec,4Hzにて,筋収縮が確認でき,被験者が心地良いと感じる程度の刺激電流を与えた。各データは16bitA/D変換装置を介し,デジタル記録した。統計解析はJMP(ver.11.0.0)を用い,対応のないt検定,Wilcoxon検定,Dunnett検定およびDunn検定による多重比較を適宜用い,危険率は5%未満とした。


【結果】

Face scale,NRSを用いてTENSによる刺激強度を調整し,全例心地良いレベルと判断された。TENSにより手掌皮膚温は同側では有意に上昇したが,対側では若干上昇したものの,有意な温度上昇は認められなかった。手掌部発汗は,両側ともにTENS進行につれて徐々に発汗量が上昇した。同側では刺激前に比べ有意な上昇を示したが,対側では上昇したものの,有意な差は認められなかった。oxy Hbは対側ではTENS終了後に有意な上昇を認めたが,同側では刺激にて若干上昇したものの有意な上昇は認められなかった。deoxy Hbは対側ではTENSにて有意な下降を認めたが,同側においてはほとんど変動が認められず,有意な差は認められなかった。total Hbは刺激により同側では有意に上昇し,対側では下降傾向を示した。


【結論】

一側前腕に対するTENSにより,手掌皮膚温,発汗量および血流動態において,刺激中もしくは刺激終了後に同側と対側に有意な差が認められた。これら同側の自律神経反応にはTENS刺激による局所応答の影響が相乗したものであると考えられ,対側の自律神経反応はTENS刺激による全身性の影響が及んだ結果であると考えられる。よってTENS電極を直接貼付しにくい患部などに対しても,遠隔部からのTENSによる影響効果が期待される。