第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P16

2016年5月28日(土) 11:40 〜 12:40 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-16-4] 生体インピーダンス法を用いた健常者における肺機能と骨格筋量の関係

髙橋泰子1, 石坂正大2, 久保晃2 (1.国際医療福祉大学大学院保健医療学専攻, 2.国際医療福祉大学大学院)

キーワード:サルコペニア, 体組成, 呼吸機能

【はじめに,目的】

サルコペニアは加齢による骨格筋量の低下を特徴とする症候群であると言われている。先行研究よりサルコペニアは日常生活活動(以下,ADL)・生活の質(以下,QOL)や転倒・骨折リスクに及ぼす影響が大きく,現在高齢者が4人に1人となっている我が国では,予防が重要となってきている。サルコペニアの評価には,歩行速度や握力,下肢筋力計測などがあげられるが,肺機能や体幹筋量など呼吸機能による評価は少ない。しかし,呼吸器疾患を代表する慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)もサルコペニアと共通した要因を持ち,COPDにおけるサルコペニアの有病率は高く,肺機能と骨格筋量の関係性が明らかになってきている。そこで本研究の目的は,健常者における四肢・体幹筋量と肺機能の関係を明らかにすることとした。

【方法】

対象者は肺疾患を持たない健常者(男性40名,女性23名),年齢19.5±1.7歳とした。肺機能はスパイロメータ(ミナト社製オートスパイロ407)を用いて計測した。握力計測は,握力計(竹井機器工業T.K.K.5401,グリップ-Dデジタル握力計スメドレー式)を使用し,計測は立位で2回計測し大きい値の左右の平均値を採用した。骨格筋量は,InBody(バイオスペース社製InBody520)を用いて生体インピーダンス法により四肢骨格筋量,体幹筋量を計測した。またBaumgartnerらの報告を参考とし,骨格筋量指標(Skeletal Muscle Mass Index,以下SMI)は,四肢骨格筋量(kg)から身長(m)の2乗で除した値を算出した。統計処理はSMIと肺機能の関係を明らかにするためにPearson相関係数を算出し,解析にはIBM SPSS Statistics 22を用いた。

【結果】

SMIと属性の関係では,男性は身長(r=0.58),体重(r=0.76),BMI(r=0.63),女性は身長(r=-0.06),体重(r=0.53),BMI(r=0.15)であった。SMIと握力,肺機能の関係では,男性が握力(r=0.47),肺活量(以下,VC)(r=0.57),パーセント肺活量(以下,%VC)(r=0.30),一秒量(r=0.46),入り秒率(r=-0.01)であり,女性では握力(r=0.65),VC(r=0.51),%VC(r=0.29),一秒量(r=0.30),一秒率(r=-0.37)であった。男女ともにSMIと握力,VC,入り秒量の間に有意な相関(p<0.05)を認めたが,%VCや一秒率では相関はみられなかった。

【結論】

健常者において男女ともにSMIと握力,VC,一秒量の間に有意な相関を認めたが,%VCや一秒率では相関はみられなかった。またSMIとの関係において,VCの評価は握力と同等の相関関係があり,高齢者に多い肺炎等の呼吸器疾患の評価と合わせて,今後サルコペニアの評価が行える可能性を示唆している。