第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P22

2016年5月28日(土) 11:40 〜 12:40 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-22-4] アキレス腱障害の発生機序の検討

~捻れのタイプ別の比較~

江玉睦明1,5, 久保雅義1, 大西秀明1, 高林知也1, 横山絵里花1, 稲井卓真2, 渡邉博史3, 梨本智史4 (1.新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所, 2.おぐま整形外科クリニックリハビリテーション科, 3.長岡中央綜合病院リハビリテーション科, 4.新潟医療センターリハビリテーション科, 5.日本歯科大学新潟生命歯学部解剖学第一講座)

キーワード:捻れ構造, 三次元構築, シミュレーション

【はじめに,目的】近年,アキレス腱(AT)障害の発生メカニズムとして,踵骨の回内時にAT内の歪みが不均一であることが要因として重要視されてきている。この原因としては,ATの捻れ構造が関与している可能性が示唆されていが,ATの捻れのタイプ別に検討した報告はない。従って,本研究は距腿関節軸上で背屈・底屈方向,距骨下関節軸上で回内・回外方向に動かした際に,ATを構成する各腱線維束に加わる伸張度(%)を捻れのタイプ別に検討することを目的とした。


【方法】対象は,先行研究(Edama,2015)を参考にATの3つの捻れのタイプ(I:軽度,II:中等度,III:重度の捻れ)を1側ずつ(遺体3側,男性,右側)を使用した。方法は,下腿標本から下腿三頭筋を剖出し,腓腹筋内側頭が付着するAT線維束(以下,MG)と,外側頭の筋腹が付着するAT線維束(以下,LG)と,ヒラメ筋の筋腹が付着するAT線維束(以下,Sol)を分離した。そして,各腱線維束の踵骨付着部の配列を分析して3つの捻れのタイプに分類し,各線維束を3mm程度にまで細かく分離した(MG:4~9線維,LG:3~9線維,Sol:10~14線維)。次に,標本を台上に固定し,Microscribe装置(G2X-SYS,Revware社)を使用して,各腱線維の筋腱移行部と踵骨隆起付着部の2点と,骨指標として大腿骨内側上顆,腓骨頭,内果と外果の最下端,踵骨隆起の外側端,距骨頭の中央部の6点をデジタイズして三次元構築した。距腿関節軸は,内果と外果の最下端を結んだ線,距骨下関節軸は踵骨隆起の外側端と距骨頭の中央部を結んだ線とした。規定した距腿関節軸上で底屈(30°)・背屈(30°)方向,距骨下関節軸上で回内(20°)・回外(20°)方向に動かした際の各腱線維の伸張度(%)をシミュレーションして算出した。統計学的検討は,Microscribe装置の測定の検者内信頼性には,級内相関係数(ICC;1,1)を用いて行った。


【結果】級内相関係数は,0.98であり高い信頼性が確認できた。今回,3つのタイプで共通して,距腿関節軸上で背屈すると,MG・LG・Solは伸張し,底屈するとMG・LG・Solは短縮した。また,距骨下関節軸上で回内するとMG・LG・Solは伸張し,回外するとMG・LG・Solは短縮した。特に回内(20°)方向に動かした際には,Solの伸張度はタイプIは4.7±3.4%,タイプIIは1.5±0.7%,タイプIIIは5.7±6.0%であった。タイプIとタイプIIIは,回内時のSolの伸張度がタイプIIに比べて大きく,Solを構成する各腱線維の伸張度のばらつきが大きい結果であった。


【結論】先行研究では,AT障害の発生メカニズムとして,踵骨の過回内時にAT内の歪みが不均一であることが要因として報告されている。更に損傷組織は,ヒラメ筋である可能性が示唆されている。従って,本研究結果から,タイプIやタイプIIIでは,過回内時にはSol内の歪みが不均一であり,更に大きなひずみが加わっているため,AT障害の発生リスクが高まる可能性が示唆された。