第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P32

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-KS-32-6] 入院前独居患者の転帰先とFIMの関係性

回復期病院入院患者の自宅復帰群と自宅以外の検討

武井宏彰 (宇都宮リハビリテーション病院)

キーワード:回復期, FIM, 在宅復帰

【はじめに,目的】

回復期リハビリテーション病院は多くの入院患者が自宅復帰できることを目標としている。自宅復帰するには,日常生活活動(ADL)の自立度が大きく影響するという事が多くの先行研究の結果より示されている。しかし,入院前の生活が独居でありその転帰先とFIMの関係を研究した例はない。当国は高齢者人口の増加に伴い高齢者単身世帯の割合も増えて,2007年(平成19年)では既に23%を超えており,医療・介護を受ける際に必要な家族等のサポートを得られないケースに対して,社会保障の仕組みの中での支援がより重要性を増している。終末期医療に関する報告によれば,2000年現在,病院で亡くなる要介護高齢者は81%に達しておりその割合は増加傾向にある。一方で,自宅で亡くなる割合は減少傾向にあり,自宅や居住施設など住み慣れた場所で終末期を迎えたいという高齢者の希望に相応していないという現状がある。よって回復期リハビリテーション病院の役割はADL自立の尺度であるFunctional Independent Measure(FIM)の点数の向上を図り,社会保障等を活用し自宅復帰率を向上する事であると考える。そこで今回入院前独居患者の転帰先とFIMの関係を調査することとした。

【方法】

対象は平成27年1月1日から平成27年10月1日の6か月間で退院した患者のうち,急性期病院転院・死亡退院を除外した60歳代以上の51名を対象とした。平均年齢は79,4±7,8歳,男性18例,女性33例であった。

方法は転帰先を自宅と自宅以外の2群に分類し,退院時のFIM各項目の点数と退院先(自宅・それ以外)との対応をFREEJSTATを使用しMann-WhitenyのU検定を行った。単変量解析で有意差を認めた項目を説明変数,自宅とそれ以外を目的変数としロジスティック回帰分析変数増加法を用いて分析した。

【結果】

運動項目のみでロジスティック回帰分析を行った結果,食事と排尿コントロールの2変数が選択された。(p>0.05)オッズ比は食事:0.307,排尿コントロール:0.790であった。的中率は78.4%であった。認知項目のみでロジスティック回帰分析を行った結果,問題解決の1変数が選択された。(p<0.01)オッズ比は0.574であった。的中率は90.19%であった。

【結論】

食事は基本的欲求の1つであり,生命維持に欠かす事の出来ないものである。また,排泄はその行為に尊厳が伴う為自力で行いたいと願う行為である。つまり,基本的な欲求,尊厳を保ち,社会福祉等で問題解決の支援が出来れば独居であっても在宅復帰することが可能であると考えられる。理学療法士の強みである全身の運動連鎖,筋骨格系からADL動作を分析・評価しアプローチに繋げる事,脳機能の知識より社会性,行動が起こるまでの過程を評価しアプローチに繋げる事が出来れば他職種間との連携により,独居高齢者の自宅復帰が可能であることが考えられる。