第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P33

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-33-3] マウス足関節底屈筋群の遠心性筋収縮による筋損傷モデルの開発

伊東佑太1, 鈴木惇也2, 縣信秀3, 木村菜穂子4, 平野孝行1, 河上敬介5 (1.名古屋学院大学リハビリテーション学部, 2.三仁会あさひ病院, 3.常葉大学保健医療学部, 4.愛知医療学院短期大学, 5.大分大学福祉健康科学部)

キーワード:筋損傷, 足関節底屈筋群, マウス

【はじめに,目的】常に一定の量の筋線維が損傷するモデル動物の作製は,理学療法効果の解明のために重要である。また,可能であれば臨床に近い病態を持つ損傷モデルが好ましい。そこで我々はこれまで,ラットの足関節を一定の角速度で底屈させることにより,前脛骨筋の伸張性収縮(LC)による安定した筋損傷モデルを作製し,理学療法効果を検証してきた。しかし理学療法効果のメカニズム検証には,ラットより小さい(1/5)マウス筋損傷モデルを用いての遺伝子操作実験が不可欠である。また,タイプの異なる筋の理学療法効果を同時に観察できるモデルが有効である。そこで本研究では,マウスの足関節底屈の複数の筋群に対して,異なる角速度のLCを行わせ,生じる筋損傷の特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】これまでに作製した小動物用足関節運動装置を用いて,ICR雄性マウス(10週齢,n=6)の足関節底屈筋群に各々角速度200,400°/秒でLCを行わせた。麻酔下のマウスに,表面電極を介した電気刺激(5 mA,周波数100 Hz,持続時間1 m秒;train 650 m秒)を与え,足関節底屈筋群を収縮させた。このとき,マウス膝関節を30°,足関節を140°の肢位とし,足底を装置に固定した。そして電気刺激に同期させ,足底を固定した装置のモーターを足関節背屈方向に回転させることで,LCを行った。モーターの可動範囲は80°とした。このLCを,10回/セット,5セット行った(インターバル:収縮間9秒,セット間60秒)。LCを行う24時間前には,損傷した筋線維を検出するために,Evans Blue Dye(EBD,1%)をマウスに投与した。LCの30分後に腓腹筋,ヒラメ筋,足底筋を採取し,凍結横断切片を作製した。凍結横断切片は,抗Laminin抗体を用いて免疫組織化学染色を施した。そして染色像から全筋線維に占めるEBD陽性である筋線維数を測定し,1000本あたりの割合を算出して比較した。

【結果】LCを行ったマウスの腓腹筋,足底筋には,ほとんどEBD陽性筋線維が観察されず(200/秒:腓腹筋;0.145±0.004,足底筋;1.962±0.302,400°/秒:腓腹筋;0.389±0.084,足底筋;9.824±0.314),LCを行っていない筋(腓腹筋;0.032±0.032,足底筋;2.167±0.606)との間に有意な差はなかった。LCを行ったヒラメ筋には多くのEBD陽性筋線維が観察され(200/秒:40.107±3.114,400°/秒:75.518±6.908),LCを行っていないヒラメ筋(5.107±1.338)よりも有意に多かった(p<0.05)。2種の異なる角速度でLCを行ったヒラメ筋間に有意な差はなかった。

【結論】LCによりマウスヒラメ筋に約4~8%の筋損傷を生じさせることができた。今回着目した角速度に加え,収縮直後からの経過などを今後詳細に観察すれば,より有用なLCによるマウス足関節底屈筋群の筋損傷モデルを開発できると考える。