第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) 一般演題ポスター
基礎P44

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-KS-44-5] Hamstringsに対する4週間のセルフストレッチングが作業関連性腰痛に与える影響

小出梨菜1, 坂野裕洋1, 豊田愼一2, 内川智貴3, 柳瀬準4, 渡辺将弘5 (1.日本福祉大学健康科学部, 2.星城大学リハビリテーション学院, 3.前原整形外科リハビリテーションクリニックリハビリテーション科, 4.前原外科・整形外科小児科リハビリテーション科, 5.東海記念病院リハビリテーション科)

キーワード:セルフストレッチング, hamstrings, 作業関連性腰痛

【はじめに,目的】作業関連性腰痛の発生機序には,日常的な不良姿勢の継続によりhamstringsを主とした大腿後面の骨格筋に筋短縮が生じ,骨盤後傾位となることで腰椎・骨盤リズムが乱れ,腰部への機械的ストレスが増大することが原因のひとつと考えられている。そのため,一般的な理学療法では,自主訓練としてhamstringsのセルフストレッチングが指導される事が多い。しかし,hamstringsに対するセルフストレッチングとhamstringsの伸張性や作業関連性腰痛との関連性について検討している報告は数少ない。そこで本研究では,hamstringsに対する4週間のセルフストレッチングがhamstringsの伸張性や骨盤前傾角度,作業関連性腰痛の発現に与える影響について検討した。

【方法】対象は健常大学生30名とし,hamstringsに対するセルフストレッチングを週5日の頻度で実施する10名(ham群),大腿四頭筋に対するセルフストレッチングを週5日の頻度で実施する10名(quad群),セルフストレッチングを行わない10名(con群)に無作為に振り分けた。実験は4週間の介入研究とし,介入前後にSLR角度,hamstringsのstiffnessとtolerance,骨盤前傾角度,2分間の重量物リフト動作に伴う作業関連性腰痛の程度を評価した。統計学的解析は,群間比較にKruskal-Wallis検定とMann-Whitney検定を用いBonferroniの修正を加えた。群内比較ではWilcoxonの符号付順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。

【結果】SLR角度は,ham群とquad群において,介入後に有意な増加を認めたが,群間には差を認めなかった。stiffnessは,統計学的な有意差を認めなかったが,ham群は介入後に減少傾向(P=0.026)を示した。toleranceは,ham群とquad群において,介入後に有意な増加を認め,quad群はcon群と比較して介入後の値が有意に高値を示した。骨盤前傾角度は,統計学的な有意差を認めなかった。作業関連性腰痛の程度は,ham群のみで介入後に有意な軽減を認めた。

【結論】本研究結果から,hamstringsに対する4週間のセルフストレッチングによって,作業関連性腰痛の発生を軽減できることが明らかとなった。しかしながら,SLR角度や骨盤前傾角度,hamstringsのtoleranceについては,hamstringsに対するセルフストレッチングのみに特徴的な変化を認めなかった。このことから,作業関連性腰痛の発生機序にhamstringsに起因する股関節可動性の低下や骨盤後傾位などの影響は低く,その他の要因が関与する可能性が推察された。しかしながら,統計学的な有意差は認めなかったものの,hamstringsに対するセルフストレッチングによってstiffnessは減少傾向を認めたため,hamstringsの筋腱複合体の粘弾性については,作業関連性腰痛に影響している可能性が残る結果となった。