第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P03

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-03-4] 脊柱後彎に対する運動療法の効果

QOL改善に影響するODI下位項目と身体機能の検討

遠藤達矢1,2, 小俣純一1,2, 遠藤浩一1, 鶴見麻里子1, 高橋諒1, 佐藤圭汰1, 宮澤拓3, 岩渕真澄2, 白土修2, 伊藤俊一1,4 (1.福島県立医科大学会津医療センターリハビリテーション科, 2.福島県立医科大学会津医療センター整形外科・脊椎外科, 3.埼玉県立大学大学院, 4.北海道千歳リハビリテーション学院)

キーワード:脊柱後彎, 腰痛, 運動療法

【はじめに,目的】

脊柱後彎は脊柱伸展可動域減少,体幹伸展筋力低下,腰痛を生じやすく,加齢とともに増悪しQOLを阻害するとされている。Bansalらのシステマティックレビューでは,運動療法の姿勢改善効果を報告しており脊柱後彎に対する運動療法は有用であると考えられるが,QOLに対する効果は明らかではない。このことから,脊柱後彎を呈する慢性腰痛症の女性高齢者に対する疼痛軽減と姿勢改善を目的とした運動療法の効果を解明し,QOL改善に影響する因子を検討することを目的とした。

【方法】

対象は当院整形外科・脊椎外科を受診した慢性腰痛を呈する脊柱後彎症患者15名(女性:平均年齢77.3歳±4.1)とした。なお,脊柱の手術既往,重度の神経根症状,脊髄症状,その他重篤な合併症がある者は対象から除外した。評価項目は,動作時腰痛(VAS),脊柱傾斜角,脊柱伸展可動域(Spinal Mouse),体幹伸展筋力,腰痛特異的QOL(ODI)とした。体幹伸展筋力は,徒手筋力測定器(モービィMT-100[酒井医療社製];HHD)を用いて椅坐位にて測定した。評価時期は介入前と介入後3ヵ月とし,全例に疼痛に対するストレッチ・温熱療法,体幹伸展可動域改善,体幹筋力強化,姿勢改善を目的とした運動療法を実施した。統計的解析は,介入前後の比較に対応のある差の検定を用いた。QOLに影響する因子の検討にステップワイズ重回帰分析を用い,介入後ODI総得点に影響を及ぼす介入前ODI下位項目,ODI下位項目に影響を及ぼす身体機能を検討した。各評価項目の関係をスピアマンの順位相関係数(rs)で求めた。有意水準は全て5%とした。

【結果】

介入前後の比較では動作時腰痛,脊柱傾斜角,ODIに有意な改善を認めた。脊柱伸展可動域と体幹伸展筋力は有意な差を認めなかった。差の程度の指標である効果量(r)は,動作時腰痛で0.54(大),脊柱傾斜角で0.44(中),ODIで0.59(大)であった。重回帰分析の結果,ODIの改善へ有意に影響した因子は,社会生活(標準化偏回帰係数;b=0.69),重量物の挙上(b=0.35)であった。社会生活には脊柱傾斜角(b=0.70)が影響を及ぼしていた。脊柱傾斜角と身体機能の関係は脊柱伸展可動域(rs=-0.82),体幹伸展筋力(rs=-0.56)に中等度以上の相関がみられた。

【結論】

脊柱後彎を呈する慢性腰痛症患者に対する運動療法介入では疼痛軽減と脊柱後彎改善,ODI改善の効果が得られた。介入後ODI総得点には社会生活の状態が影響していた。ODIの社会生活に関する項目とは外出や社会活動参加の状態を表す指標であり,立位や歩行能力,車など移動手段の利用状態を反映したものである。脊柱後彎により長時間の立位や歩行,車での移動が困難になることで影響を受けやすいと考えられる。運動療法としては疼痛軽減と姿勢改善を目的とした介入が重要であり,脊柱後彎の程度,体幹伸展可動域,体幹伸展筋力を改善させることでQOL向上に寄与する可能性が示された。