第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P13

2016年5月27日(金) 16:30 〜 17:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-13-1] 松葉杖免荷歩行の獲得に影響を及ぼす因子

吉田望, 時津直子, 長谷川睦美 (社会医療法人社団順江会江東病院)

キーワード:松葉杖, 免荷歩行, 予測因子

【はじめに,目的】

下肢運動器術後の患者(以下術後患者)の松葉杖免荷歩行(以下免荷歩行)の獲得に難渋する例は多い。先行研究では,獲得に関与する因子として上肢筋力についての報告はあるが,下肢との関連は示されていない。そこで,本研究は下肢筋力,片脚立位バランスという視点から免荷歩行の獲得に影響する因子を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象者は平成26年10月から平成27年8月の当院入院の術後患者23名とした。糖尿病患者,認知機能低下を疑う者,免荷歩行経験者は除外した。

術後翌日からの非術側下肢の筋力評価として,トルク体重比%をStrengthErgo.240(MEE製)を用いて,得られた最大トルクから算出した。非術側下肢の片脚立位バランスの評価として,開眼での外周面積,片脚立位時間をActive Balancer(酒井医療株式会社製)を使用して測定し,その他のバランス評価は片脚Functional Reach Test(以下片脚FRT)と,足趾把持筋力を握力計(トーエイライト株式会社製)を用いて測定した。術部の疼痛はNumerical Rating Scaleで評価した。その他の情報はカルテより収集した。

統計的解析は,従属変数を免荷歩行自立の獲得・非獲得,独立変数をトルク体重比%,外周面積,片脚立位時間,片脚FRT,足趾把持筋力,疼痛として,ステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とし,統計ソフトはR2.8.1を使用した。


【結果】

対象者23名(女性14名)の平均年齢は57.1±19.4歳であり,免荷歩行獲得者は12名,非獲得者は11名であった。松葉杖練習開始から免荷歩行自立までは平均4.9±5.3日だった。

統計的解析の結果,免荷歩行自立の可否に影響する因子は,非術側下肢の筋力を示すトルク体重比%(オッズ比1.195%CI:1.011~1.255)が選択された。モデルχ2検定の結果はp<0.01と有意であり,Hosmer-Lemeshow検定で適合度は良好であると判定された(p=0.998)。


【結論】

本研究の結果,術後患者の免荷歩行獲得に非術側下肢の筋力が関連していることが明らかとなった。

免荷歩行では2足歩行と同様に,立脚期に床反力はピークとなる。先行研究では2足歩行と比較し,免荷歩行の接地脚に生じる垂直床反力は1.16倍,進行方向への床反力は2.3倍になること,下肢筋力と歩行速度は比例関係にあることが報告されている。このことから,免荷歩行においても床反力に対して筋力が必要であり,また,筋力が強ければ歩行速度は増加し,片脚支持期は短縮することが予測される。よって,片脚立位時間の短縮が,姿勢保持時間の短縮となり,バランス能力の影響が低くなったのではないかと考えた。

本研究の結果より,免荷歩行獲得にはバランス能力よりも筋力の影響が大きいと解釈し,治療では筋力強化に次いで,バランス能力向上の練習を行うことを推奨する。今後継続する研究では,免荷歩行パターンや上肢機能との関連について評価項目を検討し,解明していきたい。