第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P39

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-39-3] 大腿骨近位部骨折術後症例における予後と既存椎体骨折との関連

保地真紀子, 中山裕子, 小川幸恵, 八町秀美 (新潟中央病院リハビリテーション部)

キーワード:大腿骨近位部骨折, 椎体骨折, 骨粗鬆症

【はじめに,目的】

骨粗鬆症を起因とする脆弱性骨折の内,特に大腿骨近位部骨折は直接的に,椎体骨折は中長期的にADLが低下するとされているが,両者の関連については十分報告されていない。大腿骨近位部骨折症例の予後には複数の要因が影響するとされるが,われわれは,さらに栄養学的因子が与える影響について調査を行い,Alb値の改善,術後早期の食事量がADLに影響を及ぼすことを明らかにしてきた。しかし骨密度に関しては,栄養摂取状況との関連が予想されるがこれまでに検討できていない。本研究の目的は,大腿骨近位部骨折症例において,既存椎体骨折の予後への影響及び骨密度,食事量を調査し検討することである。

【方法】

対象は2015.3~9に当院に入院した大腿骨近位部骨折術後症例64名(男性11名,女性53名,85.8±8.2歳)とし,大腿骨近位部及びL2-4骨密度,問診による椎体骨折の既往,X線画像より既存椎体骨折の数について調査した。また,椎体骨折の有無で2群に分類,年齢補正を行い,椎体骨折なし群(以下N群)21名(男性5名,女性16名,83.8±8.6歳),椎体骨折あり群(以下Fx群)28名(男性4名,女性24名,平均年齢83.8±8.7歳)について,骨密度,術後3週間の食事量,退院時Barthel Index(以下B.I),認知機能,転帰先について比較検討した。統計学的検討はt検定,χ2検定,ピアソンの相関係数を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

大腿骨近位部骨折症例64名中,椎体骨折の既往を認知していた症例は21名32.8%であった。しかし,X線上では41名,64.1%に形態骨折がみられ,内20名(31.3%)は複数椎体であった。食事量と退院時B.I及び大腿骨骨密度には有意な正の相関が見られたが,椎体骨折別ではN群はより傾向が強まるのに対し,Fx群では相関がみられなかった。尚,平均食事量は,N群1241.1±405.3kcal,Fx群1074.7±354.7kcalとFx群で低下傾向にあった。大腿骨骨密度は,N群0.62±0.11g/cm2,Fx群0.54±0.09 g/cm2と,Fx群で有意に低下が見られたが,L2-4骨密度は有意差を認めなかった。退院時B.IはN群71.9±27.6点,Fx群54.1±31.7点とFx群が有意に低く,認知機能低下の割合は38.1%,75.0%とFx群が有意に高かった。転帰先はN群が自宅71.4%,施設28.6%,Fx群では自宅39.3%,施設60.7%とFx群で自宅退院率が有意に低かったが,入院前の施設入所割合も高かった(N群19.0%,Fx群46.4%)。

【結論】

椎体骨折を有する大腿骨近位部症例は入院前からADLが低下していたことが予測され,退院時の到達ADLも低く留まることが示された。また食事量も低下傾向にあるが,骨密度や予後との関連は低いことから,栄養摂取によるADLの改善効果が少ない可能性が示唆された。