第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本運動器理学療法学会 一般演題ポスター
運動器P43

2016年5月29日(日) 11:10 〜 12:10 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-MT-43-5] 保存治療中の変形性膝関節症患者における視覚的評価が可能な歩行異常性項目群の一次元性と項目特性の検討

和田武浩1,2, 原田和宏1, 山科俊輔1,3 (1.吉備国際大学大学院保健科学研究科, 2.医療法人愛善会由良病院リハビリテーション科, 3.医療法人平病院リハビリテーション部)

キーワード:変形性膝関節症, 歩行異常性, 視覚的評価

【はじめに,目的】

変形性膝関節症(膝OA)の歩行動態は,動作解析装置を用いた研究により解明が進んでいる。とりわけ立脚期の膝関節内反モーメントの増大に関心が注がれ,臨床的にも膝関節の側方動揺性として視覚的評価が行われている。同時に,膝関節内反モーメントを減少させる補償戦略として,足部外転位での歩行,体幹の側方傾斜,股関節の屈曲増大などの異常性が数多く報告されているが,視覚的評価に関する報告は,Changら研究報告など一部にとどまっている。保存治療中の膝OA患者は歩行動作を様々な補償戦略を用い行っている以上,膝関節に出現する歩行異常性と同時に膝関節以外に出現する歩行異常性も臨床的に評価する必要があると考える。本研究の目的は,膝OA患者に対する視覚的評価が可能な歩行異常性項目群に対し,概念の一次元性と項目特性を検討することとした。

【方法】

歩行異常性項目は研究チームで項目のプールおよび内容妥当性によって10項目,さらに外的基準から妥当性が担保された6項目(歩行リズム,toe-out,足部接地,膝関節の側方動揺性,股関節の伸展範囲,体幹の側方動揺性)を歩行異常性とした。各項目の評定方法は臨床的に簡便な評価が可能になるように,歩行リズム,足部接地,膝関節側方動揺性,股関節の伸展範 囲,体幹の側方動揺性は3件法(異常性なし,中等度の異常性,高度の異常性),toe-outは2件法(異常性なし,異常性あり)を設定した。対象者は膝OA患者27名(男性8名,平均年齢73.2歳)で歩行路(7.6m)を通常速度で独歩にて1往復し,ビデオカメラで前額面と矢状面を撮影し,その後に動画を項目ごとに再生し採点を行った。動画の再生回数は自由に許可した。統計解析方法は,まず項目ごとに度数分布を観察し,次に歩行異常性という概念に対しての項目適合度を確証的因子分析にて確認した。最後に項目特性の検討においては項目反応理論を適用した検討を行った。その際,モデルは段階反応モデルを用いた。

【結果】

項目ごとに度数分布を観察した結果,3件法で設定した足部接地の度数分布は高度の異常の相対度数が0%(異常性なし:20,中等度の異常:7,高度の異常:0)であるため2件法での扱いとした。確証的因子分析の結果,設定したモデルに対する適合度指標はCFI=0.906,RMSEA=0.100,TLI=0.843であった。項目評定の段階付けの適切さは,段階反応モデルによって得られた項目反応カテゴリ特性曲線から,歩行リズムと体幹側方動揺性は2件法,膝関節側方動揺性と股関節の伸展範囲は3件法が優れる結果を得た。

【結論】

変形性膝関節症患者において理学療法士が視覚的に捉え得る歩行異常性は膝関節以外の異常性との間での概念の一次元性は現時点では不十分であった。今回設定した歩行異常性項目群の評定の段階づけは,項目に合わせ2件法と3件法を使い分けることでより有用な指標となると考える。