[P-NV-06-1] 体幹の運動速度が片麻痺患者の歩行に及ぼす影響について
キーワード:片麻痺, 歩行速度, 体幹運動
【はじめに,目的】
歩行速度は歩行の実用性を考える際に重要な要素の1つである。近年,片麻痺患者の歩行速度には筋力以上に筋パワー(筋力×運動速度)が重要であることが明らかとなってきた。
先行研究では,健常高齢者や虚弱高齢者,整形疾患患者における体幹を素早く動かす能力と歩行能力の関連性や,TKA術後患者において体幹を俊敏に動かすトレーニングが歩行能力を改善することが報告されている。そこで,片麻痺患者に対し,体幹の運動速度に着目した運動を行うことで歩行速度が改善する可能性があると仮説を立て,この仮説の検証を本研究の目的とした。
【方法】
当センター回復期病棟に入院中で,脳梗塞または脳出血により片麻痺を呈し,杖歩行または独歩が監視以上で可能である14名(男性11名,女性3名,年齢64.4±10.3歳,発症日数58.8±33.6日,下肢BRSはIIIが1名,Vが7名,VIが6名,Fugl-Meyerは下肢機能29.3±5.2点,総合計201.9±17.6点)を対象とした。
すべての対象者に,体幹を素早く動かすmodified Seated Side Tapping(以下mSST)運動と,姿勢を保持する体幹傾斜保持(以下姿勢保持)運動を実施した。介入時間は3分間に統一し,2日の間隔を空け,順序はランダムとした。また各運動実施前後に5m歩行速度を測定した。
2つの運動は,背もたれのない台に両上肢を組んで座った状態を開始肢位とした。mSST運動は上腕中央外側から10cm離して左右に台を設置し,その台までを目安に左右交互に10回,出来るだけ速く体幹を動かすこととし,15秒間の休憩を挟み3施行行った。姿勢保持運動は姿勢保持可能な範囲で体幹を最大に側方に傾斜させ,10秒間姿勢保持することとし,15秒間の休憩を挟み左右3回ずつ実施した。歩行速度は,通常速度で8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間から算出した。
統計処理は各歩行速度に対してKolmogorov-Smirnovの検定により正規性の確認を行った後,対応のあるt検定を行い,有意水準は5%とした。統計解析にはSPSS Ver.21を使用した。
【結果】
mSST運動実施前の歩行速度は0.88±0.20m/秒,実施後は0.96±0.19m/秒であり,有意な上昇を認めた(p<0.01)。一方,姿勢保持運動実施前の歩行速度は0.88±0.19m/秒,実施後は0.89±0.19m/秒であり,有意な変化は認めなかった。
【結論】
姿勢保持運動では歩行速度の変化はみられなかったが,mSST運動では歩行速度が有意な向上を認めたことから,体幹を素早く動かすことは歩行速度の向上に即時的な効果が得られることが示された。歩行速度に関して,臨床的意義のある最小変化量(MCID)は0.08m/秒以上とされており,今回mSST運動実施前後で0.08m/秒の向上が認められたことから,座位で体幹を素早く動かす運動は片麻痺患者の歩行速度の向上に有効な手段である可能性が示された。
歩行速度は歩行の実用性を考える際に重要な要素の1つである。近年,片麻痺患者の歩行速度には筋力以上に筋パワー(筋力×運動速度)が重要であることが明らかとなってきた。
先行研究では,健常高齢者や虚弱高齢者,整形疾患患者における体幹を素早く動かす能力と歩行能力の関連性や,TKA術後患者において体幹を俊敏に動かすトレーニングが歩行能力を改善することが報告されている。そこで,片麻痺患者に対し,体幹の運動速度に着目した運動を行うことで歩行速度が改善する可能性があると仮説を立て,この仮説の検証を本研究の目的とした。
【方法】
当センター回復期病棟に入院中で,脳梗塞または脳出血により片麻痺を呈し,杖歩行または独歩が監視以上で可能である14名(男性11名,女性3名,年齢64.4±10.3歳,発症日数58.8±33.6日,下肢BRSはIIIが1名,Vが7名,VIが6名,Fugl-Meyerは下肢機能29.3±5.2点,総合計201.9±17.6点)を対象とした。
すべての対象者に,体幹を素早く動かすmodified Seated Side Tapping(以下mSST)運動と,姿勢を保持する体幹傾斜保持(以下姿勢保持)運動を実施した。介入時間は3分間に統一し,2日の間隔を空け,順序はランダムとした。また各運動実施前後に5m歩行速度を測定した。
2つの運動は,背もたれのない台に両上肢を組んで座った状態を開始肢位とした。mSST運動は上腕中央外側から10cm離して左右に台を設置し,その台までを目安に左右交互に10回,出来るだけ速く体幹を動かすこととし,15秒間の休憩を挟み3施行行った。姿勢保持運動は姿勢保持可能な範囲で体幹を最大に側方に傾斜させ,10秒間姿勢保持することとし,15秒間の休憩を挟み左右3回ずつ実施した。歩行速度は,通常速度で8m歩行路の中央5mの歩行に要した時間から算出した。
統計処理は各歩行速度に対してKolmogorov-Smirnovの検定により正規性の確認を行った後,対応のあるt検定を行い,有意水準は5%とした。統計解析にはSPSS Ver.21を使用した。
【結果】
mSST運動実施前の歩行速度は0.88±0.20m/秒,実施後は0.96±0.19m/秒であり,有意な上昇を認めた(p<0.01)。一方,姿勢保持運動実施前の歩行速度は0.88±0.19m/秒,実施後は0.89±0.19m/秒であり,有意な変化は認めなかった。
【結論】
姿勢保持運動では歩行速度の変化はみられなかったが,mSST運動では歩行速度が有意な向上を認めたことから,体幹を素早く動かすことは歩行速度の向上に即時的な効果が得られることが示された。歩行速度に関して,臨床的意義のある最小変化量(MCID)は0.08m/秒以上とされており,今回mSST運動実施前後で0.08m/秒の向上が認められたことから,座位で体幹を素早く動かす運動は片麻痺患者の歩行速度の向上に有効な手段である可能性が示された。