第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本神経理学療法学会 一般演題ポスター
神経P13

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-NV-13-2] パーキンソン病患者の運動障害と脊柱変形が歩行能力に及ぼす影響

塙大樹1, 中村豊2, 町田裕3, 土生康之1, 武井良太1, 山本理紗1, 田島幹大2, 金井優宜2, 浅野聡2 (1.東埼玉総合病院リハビリテーション科, 2.東埼玉総合病院埼玉脊椎脊髄病センター, 3.順天堂大学医学部附属練馬病院)

キーワード:パーキンソン病, 歩行, 脊柱アライメント

【はじめに,目的】

パーキンソン病は高齢になるに連れて発症率が高くなるため,超高齢社会にある本邦において高齢の患者数が年々増加している。本症では四肢の運動障害に加えて姿勢反射障害も特徴的であり,一般的な高齢者よりも更に脊柱変形を発生しやすい。そのため,患者の歩行能力低下が原疾患の影響(運動機能の低下)だけでなく,脊柱支持機構の構造的破綻からもたらされることも考えられる。そして,この構造的破綻が軟部組織の柔軟性低下に由来する場合,理学療法の主要な対象である関節可動域制限として評価される。しかし,歩行能力と脊柱変形の関係性について十分な検討がされていない現状では,理学療法の焦点になり辛い。そこで本研究では,パーキンソン病患者特有の運動症状に加え,脊柱変形が歩行能力に及ぼす影響を検証した。

【方法】

対象は2013年12月から2015年4月の期間に某病院へ外来通院したパーキンソン病患者で,測定を行った31名のうち全項目測定可能であった19名(男性12名,女性7名。平均年齢72歳)をその後の解析に採用した。測定項目は以下の3種類6項目とした。1)歩行能力:Timed Up & Go Test(TUG)の所要時間・歩数。2)運動症状:Unified Parkinson's Disease Rating Scale(UPDRS)part.III。3)全脊柱レントゲン写真:Sagittal Vertical Axis(SVA),Thoracic Kyphosis(TK),Lumbar Lordosis(LL)。測定後,歩行能力と各項目間でPearsonの積率相関係数を算出した。

【結果】

1)TUGの所要時間は平均14.51±8.57秒,歩数は平均22.21±11.26歩であった。2)UPDRS part.IIIはTUGの所要時間,歩数と有意な相関を認めた(平均41.68±26.40点。それぞれr=0.69,r=0.66。両者ともp<0.01)。3.)全脊柱レントゲン写真のうち,SVAはTUGの歩数と有意な相関を認めた(平均54.96±54.90mm,r=0.51。p<0.05)。

【結論】

まず,TUGの所要時間は13.5秒が転倒高リスク高齢者のカットオフ値(Shumway-Cook A, et al., 2000)だが,これよりも遅い対象者が多く,パーキンソン病患者の歩行能力低下が示された。また,パーキンソン病患者では,原疾患の運動症状に加えて脊柱矢状面アライメントも歩行能力に影響することが示された。特に,UPDRS part.IIIのスコアとして反映されやすい四肢の運動症状改善がこれまでパーキンソン病治療の中心となってきたが,今後は歩行能力に影響する脊柱矢状面アライメントの是正にも注目し,早期治療に取り組むべきである。